逆転優勝への切り札だ! ヤクルト奥川恭伸投手(20)がゲーム差なしの3位巨人を相手に自己最多の103球を投げ、7回5安打1失点で7勝目を挙げた。初めて上がった中9日でのマウンド。苦しい中でも変化球を軸に投球を組み立て、巨人打線に決定打を許さなかった。これで今季巨人戦は2戦2勝。前回登板の7日阪神戦では7回2安打無失点と、若き右腕が優勝争いを繰り広げるライバルから2戦続けて白星奪取。チームは首位阪神に2ゲーム差に迫った。

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決して調子は良くなかった。奥川は1回、先頭の吉川に右前打を浴びると、2番松原にプロ初めての死球を与えた。これまで5戦、四死球なしだった制球がわずかに乱れた。3番坂本に左翼への適時打を浴び、先制点を献上した。いきなり迎えた大量失点のピンチ。しかし、自らの守備で自らを救った。無死一、二塁で岡本和が放った鋭い打球に体を反応させて捕球すると、二塁へ素早く送球。併殺打に打ち取った。

20歳の若き右腕は冷静だった。「序盤から状態が良くなかったが、どう抑えるか考えて投げた」。普段は150キロ超えを連発する直球も、この日は最速151キロ。140キロ台後半が大半を占める中、「むきにならないようにと思って投げた」と、変化球を織り交ぜて巨人打線をかわした。

4回2死三塁。ウィーラーに3ボールとしたが、動じなかった。4球目。球速や変化量を自在に変えるというスライダーを低めに決めてストライクを奪うと、5球目のフォークで二ゴロに仕留めた。「元々フォアボールが少ないのが自分の持ち味。カウントが悪くなってもなんとか自分のカウントに持っていけるようにと思って投げている」。7回、最後の打者を一ゴロに打ち取ると、息を深く吐きながらグラブをポンッとたたいた。終わってみれば自己最多の103球を投げ、四球も与えなかった。

逆転優勝への切り札として“上位キラー”ぶりを発揮した。前回登板の阪神戦に続き、正念場で連続の好投。プレッシャーも「優勝争いの緊張感ある試合を任せてもらえて経験になっている」と前向きに捉える。これで7試合続けて6回以上自責3以内のクオリティースタート。調子にかかわらず、試合をまとめる。20歳にして、エースのような貫禄を見せ始めてきた。【湯本勝大】