<さよならプロ野球>

 2014年も多くの選手が球界の第一線を退いた。「さよならプロ野球」で新たな人生を歩み出した元選手を紹介する。

 未知の世界へ足を踏み入れる。日本ハムの大ベテラン金子誠(39)が一区切りをつけ、第2の人生を探す旅に出る。現役を引退して球団から託された使命は、編成の心臓部であるチーム統轄本部付きの特命コーチ。新設されたポストで、前任者は皆無。自力で切り開いていく領域になる。来季で40歳、不惑を迎えるが、大きな戸惑いがある1年になる。「正直、何をやっていいのか分からないんだよね」。

 待っている生活に不安は募る。来年2月に渡米する予定。球団の業務提携先であるパドレスで、指導者としての経験を積む。本場の春季キャンプに参加。マイナーが活動の中心になると伝えられている。「オレ、無理だもん」。そう公言してはばからない、外国嫌い。英語には明るくなく言葉の壁もある。日常生活ではなく、グラウンド上での任務を遂行できるか、今から苦悩しているという。

 現地で米球団の運営システム、意識や練習メニューの違いなど見聞を広めることが狙い。球団は近い将来、指導者として「育成」するための役職を設けた。特別な措置。来季は日米を数度、往復する予定。ヒルマン元監督、梨田前監督から引き継ぎ、由緒ある背番号も「88」が与えられた。「とにかくチームのためになることを、やりたい。オレに何ができるかだけど」と早くも自問自答の日々だ。

 早急な世代交代が行われるだけに、使命感は増す。独特な持論を展開した。「センターラインは、人としてもしっかりした選手がやらないといけない。チームとしても重要。技術だけじゃないんだよね」。自身の引退、大引のFA移籍で来季は流動的になった二塁、遊撃の後継の発掘への意欲もある。「まあ1年間、なるようになるよ」。無頼派は第一線を離れても、わが道を貫く。【高山通史】

 ◆金子誠(かねこ・まこと)1975年(昭50)11月8日、千葉県出身。常総学院から94年ドラフト3位で日本ハム入団。95年4月2日近鉄戦で1軍デビューし、96年に新人王獲得。ベストナイン1度、ゴールデングラブ賞3度。09年の7試合連続二塁打は史上最多。プロ通算1996試合、1627安打、打率2割5分6厘、84本塁打、620打点。右投げ右打ち。