<横浜3-2広島>◇25日◇横浜

 ハマスタはやっぱり…。いやいやそんなことは言っちゃいけない。広島はタイムリー欠乏症に後戻り。力投のルイスを助けることができず、横浜に逆転負けを喫した。約1年前に、2戦連続サヨナラ負けを喫した球場でのイヤな敗戦だった。それでも明るい話題はある。4番の栗原が本格的にお目覚めだ。久しぶりの2号ソロに痛烈二塁打と、完全復調。プラス材料を見ていけば前を向ける。

 スーッと糸を引くように、低い弾道できれいなライナーが外野に向かっていく。中堅の俊足金城が動きだしたときには、もう横を抜けていた。6回1死から栗原が放った弾丸二塁打のシーン。これぞ、栗原。この打球だ。高らかに完全復活を告げる、この日2本目の快打だった。

 「いい感じです。自分のスイングができた。自分のタイミングが取れています。このまま、この調子を続けていきたいですね」。

 チームバスへと続く通路。イヤな敗戦後だけに少し暗い雰囲気はあったが、栗原の口調には精気がよみがえっていた。

 1打席目に豪快なノロシを上げていた。2回の先頭で左翼スタンドに高々とぶち込んだ。左翼方向に吹く風もあったが、それとは関係なく飛距離十分の先制アーチ。24日ぶり、忘れかけていた今季2度目の感触が手に残った。「カウント0-2だったので思い切り打っていきました。(回の)先頭打者だったし、出塁したいと思っていた。よく入ってくれましたね」。

 苦しみの中から絞り出された2本だった。開幕からソロ弾だけの1打点が15試合も続いた。初タイムリーは4月18日。苦しい毎日だった。広島市民球場での試合では誰もいない午前11時に来て1人で特打。夜も寝付けず、深夜に自宅でバットを振った。「打てない4番」のレッテルを努力と研究、そして周囲の協力で何とか引っぱがした。

 20日の試合前。不振を心配するブラウン監督に呼ばれた。場所は監督室。「入ったのは初めてじゃないですけど、ああいうことは今までなかった。いろいろ気持ちの面で話してもらいました」と感謝した。

 19日の巨人戦後には先輩の緒方に呼び止められ、プロ入り後初めての本格的な打撃談義。20分間ほどの濃密な時間だった。「あれだけの実績がある人。自分が考えていることと一致している部分もあった。なるほど、と新たに思ったこともあります」。4番の重責と向き合い、自力で突破した。24日のヤクルト戦でも2点打を放っている。

 だが負けた試合で4番が心底満足できるわけはない。本塁打を放った2試合はともに黒星。「勝ちたいですね。これからは勝ちに貢献できるように頑張りたい」。カープにとってやっかいな横浜の夜だが、決して悪夢ばかりじゃない。【柏原誠】