巨人渡辺恒雄球団会長(82)が25日、来年3月の第2回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の監督について「星野監督しかいない」と断言した。北京五輪での惨敗を「残念」と振り返りながらも、星野監督以上の人材がいないとした。WBCの監督は12球団と日本プロ野球組織(NPB)が協議して決める事柄だが、日本ラウンドの主催は巨人の親会社である読売新聞社だけにそのトップの発言力は大きい。世論や他球団の反発も考えられるが、WBCも星野ジャパンで臨む可能性は高くなった。

 即答だった。都内ホテルでの夕食を終えた渡辺会長は、WBCの監督就任に星野監督が含みを持たせていることを報道陣に問われると「ほかにいるか」と迷いなく答えた。さらに「星野君にも欠点はあるかもしらんし、失敗したかもしらんが、じゃあ星野君以上の人物が、オレはいるとは思わない。星野君以上の采配を振るう人間がいるかね。いたら教えて欲しいよ」とも続けた。WBCも星野監督以外いない、と熱っぽく言い切った。

 北京五輪では4位に終わったが、星野監督に寄せる期待は変わらなかった。メダルなしの惨敗には「残念は残念だな。やっぱり韓国とかキューバとかは選手がハングリーなんだよ。その点は日本の選手が少し甘ったれてるから、いい勉強になったと思うよ」と選手のメンタル面を厳しく指摘。一方で、監督の采配についての質問には「これは専門家が、君たち(報道陣)が書いてるじゃないか。何もオレが言う必要ない」とあくまで回答を避けた。

 オールプロで臨むWBCの監督人事は、五輪の終了でいよいよ本格化する。具体的には9月1日の実行委員会で議題に上げられ、正式な議論がスタートすることになる。選定作業を進めるのはあくまでNPBと12球団が中心だ。だが東京ドームでアジア4カ国が参加して行われる日本ラウンドは読売新聞社の主催であり、読売グループのトップである渡辺会長の発言が与える影響はきわめて大きい。

 「星野ジャパン」にかけた野球ファンの期待が裏切られた直後だけに、「星野続投」には世論の反発も予想される。さらには選手を監督の下に送り出す立場の他球団が実行委員会などで異議を唱えることも考えられる。だが星野監督に逆風が吹いているこの時期にあえてなされた「主催者サイド」の発言は、水面下で進められている選定作業において星野監督の大本命は揺るがないことを如実に示した。

 星野監督本人が、要請を受けても辞退する可能性もある。だが星野監督には北京での屈辱に対する反骨心が芽生えている様子もあり、時間がたてばさらに大きくなることも考えられる。「WBCで星野ジャパンが雪辱」という青写真は、早くもはっきりと浮かび上がってきた。【大塚仁】