<阪神5-3広島>◇29日◇甲子園

 記念すべき100打点が…。広島の主砲栗原が甲子園での阪神戦で3-3と追いつく左前適時打。これがノルマとしていた今季100打点目になった。しかし初回の無死満塁で併殺に倒れ、それが最後まで響いて敗れた。執念は見せたが、同点の8回に金本に決勝2ランを浴びて息の根を止められた。「健闘」では意味がない。30日からの関東6試合にすべてをかける。

 バス乗り場に続くベンチ裏の通路にモニターがある。赤ヘル戦士が引き揚げているまさにそのとき、モニターには金本と新井のお立ち台インタビューが映していた。一瞥(べつ)する選手、気付かない選手…。今年最後の甲子園。元広島2人の笑顔と、悔しそうな広島ナインのコントラストが非情に映った。

 祈りは通じなかった。滞空時間の長い飛球が、スーッと右翼スタンド最前列に落ちた。上野は腰に手を当て、大型スクリーンのVTRを見ながら数秒間、固まった。3-3の8回無死一塁。金本に決勝2ランを浴び、勝敗は決した。

 抜けろ!

 鈍い音を残した打球は、見えない力に押されるように三遊間を強引に破った。1点を追う8回2死二、三塁。栗原のスイングはウィリアムスの球威を上回った。栗原は一塁塁上で両手をバチンと強くたたき、無意識にほえた。3-3。追いついた。

 「追い込まれていたので食らいついていった。ヒットになってくれば、どんな当たりでも関係ない」。

 “失点”を取り返そうと必死だった。初回無死満塁の大チャンスで石川の沈む球を思い切りたたいた。三塁線を抜けると思われたが、併殺になった。嶋も倒れてまさかの無得点。「あそこで1点取っていればこっちのペースだった…」。厳しい表情だった。

 7回の一打が100打点目になった。この日戦列復帰した先代4番の阪神新井が昨年まで2年連続で達成。「100打点はノルマ」と誓いを立てて臨んだシーズンだった。だが、こんな形で到達してもうれしいわけがない。「自分の成績は関係ない。とにかく勝たないと。どんな形でもいいから勝ちたい」。

 意地は見せた。投手陣も踏ん張った。それでも、白星以上に価値のあるものは今、あり得ない。ブラウン監督は「もう決して負けられない。全部勝つつもりでいる」と宣言した。ナインも同様だ。強い決意を胸に最後の関東6試合に臨む。【柏原誠】