来春の第81回選抜高校野球大会(3月21日から12日間、甲子園)の「21世紀枠」の全国9地区の候補校が15日、日本高野連から発表され、東北地区から利府(宮城)が選出された。公立校ながら、今秋東北大会では4強入りを果たす快進撃。清掃活動など地元に愛される姿勢も評価された。来年1月23日の選考委員会で決まる出場校3校に選ばれれば、同校初の甲子園出場が決まる。

 全員で朗報を聞くことはできなかった。前日14日までのドイツへの修学旅行の代休のため、この日は2年生部員が学校に不在。それでも選出を予想して登校していた遠藤聖拓主将(2年)は、会見の席に座ると「選んでいただいた立場なので、みんなには悪いことをしないように伝えます」。笑顔で素直な心境を語り、隣の小原仁史監督(45)らを苦笑いさせた。

 この秋は旋風を巻き起こした。県大会決勝では9-8で強豪・仙台育英を下し、創部25年目で初の県制覇。秋は初出場となった東北大会で日大東北(福島)酒田南(山形)と次々と有力私立校を撃破して4強に進出した。評価されたのは、グラウンドでの勇姿だけではなかった。

 同校の伝統として、生徒は最寄りのJR利府駅から乗車する車内でゴミ拾いに取り組む。06年にはJR東日本から感謝状を受賞。今秋東北大会の準決勝で敗退した部員は、翌日には同校から利府駅までの徒歩20分の道で清掃活動を行った。地域に愛される姿勢を大切にするだけに、小原監督も「もし出場校に選ばれたら、地元の人も一緒に喜んでもらえたら」と話した。

 初の甲子園出場を想定し、準備を整える。遠征費などの捻出(ねんしゅつ)のため、年末年始は多くの部員が年賀状配達のアルバイトを行うが、今年は可能な限り練習に時間を費やすという。夜間も練習ができるように、近隣の町営球場も借りる。「気を張って、日々を過ごしていきたい」と遠藤。地元への最高の恩返しを目指し、戦いに備える。【由本裕貴】