<広島1-12阪神>◇25日◇マツダスタジアム

 あぁ~スッキリした!

 こんな勝ち方待ってました。前夜は能見の完封、この日は16安打を浴びせ今季最多12得点を奪った。1回、チャンスで凡退が続いていた5番新井貴浩内野手(32)が胸のすく先制二塁打で火をつけ、打線爆発の導火線になった。これで今季2度目の3連勝。借金も返済して5割にも復帰した。さあ、この調子でガンガンいきますか!

 強烈な打球が大攻勢の合図だった。新井のバットがついに目覚めた。1回表2死一、三塁。真ん中低めに落ちるフォークを完ぺきにとらえた。弾丸ライナーで左中間を破る。先制2点タイムリー二塁打だ。「長いことヒットが出ていなかったので、いいところで1本が出てチーム的にも個人的にもよかった」。ここから葛城の初アーチ、そして今季最多となる12得点圧巻劇が生まれた。17打席ぶりに放った1本の安打、本塁打以外では実に39打席ぶりのタイムリーが試合を大きく動かした。

 「新井再生」は首脳陣の中でも最優先事項だった。金本の後を打つ重要なポジションで結果を求めて、無意識のうちに打撃を乱していた。中日3連戦では、真弓監督は連日ティーを上げた。この日も室内練習場に足を運び、じっと見つめた。「ヒットがほしくなると、上に頼ってしまう。下半身を動かすようにね」。強引に上体で打ちにいくことが不振の原因と判断。左ひざの使い方など実際に実演し、二人三脚でトンネル脱出に励んだ。この日の2安打に「タイミングも合ってきたし、打つ雰囲気が出てきた。力が抜けてくると、ガンガン行くよ」と合格点を与え、さらなる爆発も予告した。

 かつての古巣は新球場となって、様変わりした。試合前には、広島の大先輩である大野豊氏(野球評論家)に笑顔であいさつ。しかし「作り笑いになってるぞ!

 本当に笑えるようにがんばれ」と励まされた。モヤモヤした思いが表情に出ていたのだろう。2安打で復調の兆しが見えたが、本人はまだ納得していない。「きっかけになるか?」と問われ「特には…」と静かに答えた。「何を言っても、やるしかないんでね」。最高の笑顔はまだ先の話だ。

 それでも1年前の苦い思いはぬぐい去った。移籍1年目の4月1日、旧市民球場で大ブーイングを浴びた。結局、腰の疲労骨折もあり、同球場でプレーする最後の3連戦となった。「ケガで行けずに心残りだった」と漏らしたこともあったが、これで心機一転。新球場は打撃復活のふさわしい場所になった。

 5番が打てば、打線が躍動する。相手投手は精神的な疲労が蓄積し、下位打線でも集中力を欠くようになる。その典型がこの日の試合だった。「かなり層が厚くなるね。どこからでも点の取れる打線になる」と真弓監督は力強かった。理想の攻撃に、新井のバットは欠かせない。【田口真一郎】

 [2009年4月26日11時26分

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