史上初の公開くじ引きが実現する。日本野球機構(NPB)は3日、10月29日午後4時から東京・港区内のグランドプリンスホテル新高輪で行われる新人選手選択会議(ドラフト会議)の会場に、ファン1000人を招待すると発表した。45回目にして初の試み。超目玉、最速155キロ左腕の花巻東・菊池雄星投手(3年)は複数球団が1位指名することが確実視され、運命の抽選が待ち受ける。野球ファンにとっては、歴史に残るシーンに立ち会えるという、たまらない新企画となりそうだ。

 数々のドラマを生んだドラフトの舞台が、劇的に変わる。通常なら監督、スカウトらの球団関係者しか入れない会場に、初めて一般ファンの「客席」が設置されることになった。NPBでは7日から公式サイト(http://www.npb.or.jp)で観覧希望者の応募を受け付け、抽選で1000人が選ばれる。

 この日、都内のホテルで行われた記者会見に加藤コミッショナーとともに出席した王貞治コミッショナー特別顧問は「今までなぜなかったのかと思うくらい、良いアイデアと感じた」と全面的に賛成の意向だ。さらに「未来のスターが誕生する場に同席することで、今までにない一体感を持てると思う」とファンのわくわく感を想像した。

 「未来のスター」とは今年の場合、もちろん菊池のことだ。20年に1人の逸材とも呼ばれる左腕は、今春センバツ準優勝で脚光を浴び、現段階では8球団が1位指名を検討しているといわれる。新日鉄堺・野茂、亜大・小池に史上最多の8球団が競合したが、菊池を何球団が指名するのか―。その場合のくじ引きは、球界だけでなくお茶の間からも注目されるのは間違いない。

 王顧問はドラフトの思い出を問われ「やはりくじ引き」と答えた。「19年監督をやってきたが、実際にくじを引いて、開けるのを待っている時間が一番緊張した」と振り返るように、張り詰めた空気をファンも共有できるようになる。

 過去、くじでは数々のドラマが生まれている。85年の清原(PL学園-西武)、89年の野茂(新日鉄堺-近鉄)、92年の松井(星稜-巨人)、98年の松坂(横浜-西武)…。その後の人生を決める瞬間が、ここにあると言ってもいい。大リーグのドラフトでは、指名が予想される選手本人を会場に呼んでテレビ中継するなどショーアップ化が進んでいる。日本では「ナマ観戦」という形でファンに楽しみを提供する。抽選箱をアクリル製の半透明にして手の動きが見えるようにするなど、まさに「ガラス張り」のドラフトとなる。

 今年は大手電機メーカーの東芝が初の特別協賛という形でサポート。会議の正式名称は「プロ野球ドラフト会議supported

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 TOSHIBA」となり、2年ぶりに地上波での中継も復活する。高校生の授業時間に配慮した形で、会議は午後4時からのスタートとなり、TBS系列で午後3時55分から4時53分まで生放送される。

 指名される若者に向け、王顧問は「どこまで登れるかチャレンジしよう」とのメッセージを送った。菊池がプロとしての第1歩を踏み出す日を、1000人の「歴史の証人」は大きな拍手で祝福するはずだ。

 [2009年9月4日9時37分

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