大ゲンカ一転、電撃的な和解だ-。楽天野村克也監督(74)が19日、監督批判などからクライマックスシリーズ(CS)で“戦力外”としていたトッド・リンデン外野手(29)と和解し、21日から始まる日本ハムとのCS第2ステージ(札幌ドーム)で1軍登録することを決めた。リンデンはこの日、スーツ姿でKスタ宮城の監督室を訪れ、野村監督に謝罪。野村監督は、反省の意を感じ取り「札幌へ連れて行く」と1軍復帰を決めた。CS第2ステージを勝ち抜くための“補強策”。日本シリーズへノムさんは本気だ。

 予想外の緊急昇格だ。午前中、泉2軍練習場で練習を行ったリンデンは、視察に訪れていた橋上ヘッドコーチに、監督批判など一連の暴言を謝罪した。「だいぶ反省していた」と判断した橋上ヘッドコーチが野村監督に報告すると「じゃあ練習後に話すから呼んでくれ」と、緊急会談が決定した。

 1度目の「謝罪」となった13日はハーフパンツ、Tシャツ、サンダルというラフな姿だったが、この日は違う。リンデンはスーツにネクタイ、黒の革靴の正装でビシッと決めた。裏口からこっそり帰った前回とも違い、報道陣の前に姿を見せ、会談の内容を丁寧に説明した。非礼をわびた助っ人に、野村監督も「今日はちゃんとした格好で来たな。戦力として考えているのでしっかり調整してほしい」と1軍復帰の許可を出し、最後は握手で締めた。

 和解の決め手は、騒動後の態度だった。16日に練習を再開したリンデンは、CS第2ステージへの出場を目指し熱心に練習。「自分の言動を後悔した。第1ステージは岩隈や田中がいい投球をして、打者がサポートしていたのを興奮しながら見ていた」と、心境を明かした。野村監督も1度目の謝罪でケンカ別れに終わった後「その後、どういう態度で過ごすかだな」と気にかけていた。練習中も「一昨日、米田代表にも勘弁してやってくれと頼まれた。情にもろいんだよ。おれも優しい、冷酷になれないから」と、すっかり態度を軟化させていた。短期決戦直前に、もう1枚「大砲」を補強した野村監督のしたたかさもある。

 もちろん、日本一を目指すチームにとっては大きなプラスだ。初戦に先発が予想され、騒動の発端となった武田勝こそ苦手にしているが、後半戦に見せた勝負強い打撃は心強い戦力となる。橋上ヘッドコーチも「武田勝についても、同じように空振りを繰り返しているようには見えない」と改善していると認識している。

 11日に抹消になっていたため、21日から登録、出場できる。20日の練習前には、リンデン自らチームメートに謝罪する。「邪魔になる言動をしてしまったことを、チーム全員に伝えてから合流したい」と、復帰のわだかまりも取り除いてチームに戻るつもりだ。すっかり“優等生”になったリンデンだけに、試合でも大化けする可能性もある。【小松正明】

 [2009年10月20日8時56分

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