<広島7-10西武>◇25日◇マツダスタジアム

 おかわり君が西武の歴史に名を刻んだ。中村剛也内野手(26)が広島戦の3回、左翼スタンド後方のネットを直撃する先制の満塁13号を放った。通算8本目の満塁弾は、清原、秋山を抜き、伊東に並ぶ球団タイ記録となった。主砲の1発で波に乗った打線は13安打10得点で広島を下し、2位ロッテとの差を1・5ゲームに広げた。

 打った瞬間、飛距離は十分だった。あとはフェアかファウルかだけ。中村は三塁塁審が右手を回すのを確認して、ゆっくりと走りだした。3回2死満塁。広島岸本のスライダーを左翼ポール際に運んだ。6試合ぶりとなる13号は、左翼後方のネットを直撃する満塁弾。「狙い通り。切れなくて良かった」。納得の一打に思わず笑みがこぼれ、声も弾んだ。

 試合前の先発予想は左腕の篠田か青木高。右の岸本の先発は予想外だったが「戸惑い?

 全然なかったっす」と動じていなかった。もともとがデータを頭にたたき込んで打席に入るタイプではない。普段から相手が初対戦と分かっても「データはあまり見てない。打席で初球からガンガン振って合わせていく」と常々話す。実際岸本と対戦した2打席とも、初球からフルスイングして空振り。そして第1打席から数えて5スイング目でアジャストしてみせた。

 兆候はあった。打撃練習では柵越え3連発を披露。森打撃コーチと片岡が「今日絶対打つな」とうなったほどだったが、終了後に森コーチと球をとらえるポイントを確認した。入念な準備が生んだ自身通算8本目のグランドスラム。西武では伊東に並ぶ球団タイ記録だ。それでも「(記録に並んだ感想は)別にないんですけど。でもやっぱり満塁ホームランは最高の形っすね。一気に4点入るし」と、記録よりも4番の仕事を果たした快感に酔いしれた。

 マツダスタジアムといえば、思い出されるのは09年の球宴。ホームラン競争で優勝し、試合でも球場最長となる155メートルの特大弾で周囲の度肝を抜いた。思い出深い地でパワーをもらったかのような、豪快なアーチ。お祭りではない真剣勝負の中での1本の味は、格別だったに違いない。【亀山泰宏】

 [2010年5月26日8時9分

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