<巨人1-0楽天>◇7日◇東京ドーム

 巨人が今季初の延長戦をサヨナラ勝ちで制した。0-0で迎えた楽天戦の10回1死満塁、小笠原道大内野手(36)が決勝の中犠飛を放った。6月に入って“投壊”状態だった投手陣も、先発の内海哲也投手(28)が7回まで踏ん張ると、久保-越智-クルーンとつないで無失点リレーを果たした。パ・リーグ猛打爆発の日の中で、巨人だけが得点を許さなかった。

 巨人小笠原は照れくさそうにベンチ裏の取材ルームに入ってきた。グラウンドでは小笠原コールが響く中でも「オレでいいのかなという感じ。ヒットで決めたかったけど」。試合を決めた喜びは意外なほど控えめだった。

 サヨナラの好機はフォア・ザ・チームの精神で築いた。だからこそ、チーム一丸での勝利を小笠原は強調した。10回無死一塁、加治前は追い込まれながら執念で送りバントを成功。坂本が四球、高橋はコンパクトなスイングで内野手の間を抜いた。「自分1人のホームランで決めたんじゃない。(全員の)何とかしなくちゃいけないという気持ちが、こういう結果になった」。ナインの気持ちが、バットに乗り移っていた。

 原監督の助言も、殊勲打を導くヒントだった。打席に向かう前、技術的なアドバイスを送られた。「覚えてない。思い切っていけ、後は任せたと」と明かさなかったが、篠塚打撃コーチは「低めの球を追いすぎていた。(ボールの)下に入るのが、ガッツの特長なんだけどね」と説明。「低めを振らないように、高めを意識した」打撃で、内野手5人の奇襲戦法を打ち砕くサヨナラ犠飛を放った。

 勝負を決めても、心の底から喜べなかった。先発内海が7回無失点と好投。最高の投球を見せた内海に白星をプレゼントできなかったことが許せなかった。「僕らの仕事は勝ちをつけてあげることなのに、悪いことをした」とポツリ。約1カ月間白星が無くても、懸命にトレーニングを続ける内海を思いやった。

 小笠原に全幅の信頼を寄せる原監督は「ああいう場面でプレッシャーを感じたら、いい結果は出ない。平常心で打席に立ったのが、いい結果につながったと思う」と評した。交流戦首位の楽天に勝ち、初優勝へ望みをつないだ。パ・リーグが上位を占める中、セ・リーグ首位の底力をチーム全員で示した。【久保賢吾】

 [2010年6月8日8時41分

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