<ロッテ1-19ソフトバンク>◇29日◇千葉マリン

 ソフトバンクがビックリ弾で2位浮上だ。森本学内野手(32)が8年目でプロ初本塁打を放つなど、4安打5打点の大暴れ。チームを、引き分け挟んでの4連勝に導いた。森本は5回の攻撃で1イニング2適時打も記録。打線は7年ぶりとなる1イニング2ケタ得点に加え、秋山体制初の1試合20安打超えとビックリ猛打ショーを展開。6連敗の窮地を乗り越え、大型連勝ロードへと突入だ。

 この日ばかりは盛り上げ役でも応援団長でもなく、スラッガー森本だった。プロ8年目での初モノラッシュに背番号32が酔いしれた。まずはプロ初アーチだ。3回表の2打席目。「8年かかりました!打者として忘れていた感触でした」。2死一塁でロッテ吉見の変化球をとらえた。打球は左翼スタンドへ。三塁側ベンチで出迎えた秋山監督の前で、両手を大きく広げるガッツポーズ。通算707打席目。175センチの小柄な体から飛び出した貴重な1号ビックリ弾で、ベンチのムードは最高潮に達した。

 ビックリイニングも演出した。5回表。3打席目の無死二、三塁では右前2点適時打。さらに、打線がつながり、再び打順が回ってきた4打席目は三塁線を破るタイムリー二塁打。1イニング2適時打と暴れ、チーム7年ぶりとなる1イニング2ケタ得点の起爆剤となった。2回の右前安打を含め、1試合4安打もプロ初なら、5打点も初めて。過去出場した331試合では未経験ゾーンに、たった1試合で突入した。

 連敗を止め、連勝を呼び込んだ幸運も持つ。チームが連敗を6でストップした24日の日本ハム戦。試合前の円陣で中心に立ったのが森本だった。昨季、主将小久保から応援団長として指名されたほどのムードメーカー。前カードまで円陣の声出し役を務め続け、チームは3連勝に1分け。この日は松田に声出し役を譲ったが、グラウンドで主役の働きだ。

 森本が底上げした打線は、今季初の1試合5本塁打。さらに23安打19得点はいずれも秋山ホークス最多記録。ロッテとの直接対決を制し、5月8日以来52日ぶりに2位へと浮上した。もっとも、森本の真骨頂はド派手なアーチではない。2回の1打席目。1死一塁で迎えたシーンで、カウント2-2からベンチはエンドランを仕掛けた。チェンジアップをしぶとく右前に落とし、一、三塁の先制機をお膳立てしたのも森本。秋山監督は「森本がエンドランを決めてくれたからな」と、いぶし銀の一打を勝因に挙げた。

 試合後のヒーローインタビューで、森本は盛り上げ役の顔をのぞかせた。「今日は(サッカーの)日本対パラグアイ戦がある。早く見たいです。僕が本塁打を打つ確率より(日本代表が)パラグアイに勝つ確率の方が高いと思うので大丈夫でしょう」。首位西武には3ゲーム差。ナインの士気を高める男として、内野はどこでも守れる守備の人として、そしてバットマンとして、奪首に森本が欠かせない。【松井周治】

 [2010年6月30日11時57分

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