<阪神4-2巨人>◇20日◇甲子園

 どえらいやっちゃ!

 虎のルーキー右腕、阪神秋山拓巳投手(19)が、またまた正念場でチームを救った。2度目の巨人戦は先行されながらも6回7安打2失点と粘って味方の反撃を呼び、自身4連勝。プロ初先発でKOされ、悔し涙を流した宿敵にリベンジ星を挙げた。頼もしい19歳の快投で勢いづいた阪神は21日からナゴヤドームに乗り込み、1・5差で追う首位中日と3連戦。勝てば阪神に今季初めて優勝マジック10が点灯する。さあ、決戦だ!

 19歳の怪腕に運も味方した。秋山が打球の行方を見つめる。阿部への142キロが失投になり、左翼に打ち上げられた。虎党の悲鳴が上がる。1発なら逆転…。だが、力負けしない。ライン際で左翼マートンのグラブに打球が収まった。最大のピンチを切り抜けると、マウンド上には苦笑いをこらえる秋山がいた。

 「逆球だったし、打ち損ねだったので複雑でした」。負ければ優勝争いから後退する一戦の勝敗を左右する分岐点だった。勝ち越した直後の5回、2死から小笠原、ラミレスに連打されたピンチ。「ラミレスのヒットで代わると思っていたので、投げさせてもらえて、抑えられて良かった」。最も嫌な打者と感じる阿部を迎え、またもチームを勝利に導いた。

 心でつぶやく言葉がある。高校2年夏、1年秋と背番号「1」を背負いながらサヨナラ負けで甲子園への道を閉ざされた。1球の怖さを知っている。ピンチになるとベンチから合言葉が飛び交った。「この1球」。プロになっても頭をよぎる。「今でも思い浮かべるときはあります。だけど、あんまり決まらないです」。阿部への「この1球」も力んだ。形ではない。勝負に勝った。

 土壇場で踏みとどまり、6回7安打2失点。6回以外は毎回走者を出しながらも粘った。「巨人戦というのもあって、いつも以上に投げにくかった」。異様な空気にも押しつぶされず、チームを優勝戦線に踏みとどまらせる、価値ある勝利。それでも、先発ローテを務める男は「今日の内容じゃ、何も言えないですね」と満足などしない。高卒新人という甘えなどなかった。

 黄金世代は雄星(西武)を筆頭に、今村(広島)今宮(ソフトバンク)堂林(広島)中村(日本ハム)と好素材がそろう。昨春のセンバツの時には、雄星の方から連絡先を聞かれたが、夏を境に知名度は逆転。プロ入り後も、扱いの違いに嫉妬(しっと)を覚えたこともある。シーズンが始まれば、同級生の1軍昇格はくまなくチェックして刺激材料にした。

 ライバルが多いほど燃え上がる。「今はもう雄星世代っていう言葉はないんです。まだ、僕らの世代には名前がないんです」。間違いなく1番の輝きを放つ19歳。救世主は“Vの使者”になりつつある。1・5ゲーム差で迎える中日との直接対決に望みをつないだ。秋山の快投が優勝への道を切り開いた。【鎌田真一郎】

 [2010年9月21日11時29分

 紙面から]ソーシャルブックマーク