今季、国内他球団への移籍が可能なフリーエージェント(FA)権を取得した広島嶋重宣外野手(34)が18日、広島市内のマツダスタジアムで球団と第1回交渉を行い、来季も残留する意志を示した。プロ16年目を終えた生え抜きのスラッガーは「2軍で鍛えてもらって今の自分がいる」と感謝した。今季はスタメン出場する機会も多く存在感を示したが、チームはBクラスに低迷。11年もカープの一員としてリベンジを期す。

 プロ野球人生の岐路に立った嶋は「カープ愛」を貫く。この日はシーズン終了後、初めて球団と交渉を行った。約1時間半に及ぶロングトーク。交渉役の鈴木球団本部長に胸のうちをストレートに明かした。結論は明快だった。16年間プレーしたカープへの愛着がある。嶋は感謝を口にした。

 「自分は下積み時代、2軍でずっとやって鍛えてもらって今の自分がいると思っている。広島カープのチームメートと一緒にプレーしたい。今年の悔しさがすごくあるし、やり返したい気持ちがすごく強いです」

 投手として94年に広島入りしたが芽が出ず、99年から野手に転向。2軍暮らしが長く続いたが、04年に大ブレーク。首位打者に輝くなど、打撃センスが一気に開花した。カープの猛練習に育てられた恩義もある。赤ヘル軍団の一員として、来季以降もチームの再浮上に貢献する意気込みは強い。

 今季、開幕当初はスタメンからもれて代打要員だったが、天谷やフィオらが不調に陥るとスタメン出場する機会が増えた。6月29日巨人戦(マツダ)では4番に抜てき。故障者が続出するチーム事情のなかで、主軸として力量を発揮し続けた。今季は23試合に4番で出場。本塁打数は3年ぶりに2ケタの14本をマークした。鈴木本部長も「故障もない。長打力があって左のスタメンとして必要」と評価。交渉の席上では来季年俸など、条件面も提示した。FA権の行使について、嶋は「今のところない」と言う。早ければ、次回交渉で正式契約を結ぶ。

 野村監督もベテランの決断を「FAは選手の権利だけど、彼らが残ってくれるのが一番ありがたいこと」と胸をなで下ろした。復活の兆しを見せた今季は左肩痛との戦いでもあった。休日になると人知れず、新幹線に乗って遠方の治療院に足を運んだこともあった。執念がある。意地がある。嶋は言う。「来年戦える1人の戦力として、枠に入っていけるように、という気持ちです」。来季、35歳になる嶋のハートは真っ赤に燃えている。【酒井俊作】

 [2010年10月19日12時2分

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