<日本シリーズ:中日2-2ロッテ>◇第6戦◇6日◇ナゴヤドーム

 日本シリーズ史上最長の死闘となった。ロッテが王手をかけて迎えた第6戦は、延長15回2-2で24年ぶりの引き分けに終わった。シリーズ初の延長15回に加え、試合時間5時間43分も最長。これも最多となる両チーム44人が出場した熱戦が終わったのは、最も遅い午後11時54分。対戦成績はロッテの3勝2敗1引き分け。ロッテは今日7日の第7戦に勝てば、5年ぶりの日本一が決まるが、中日が勝つか再び引き分けた場合は、8日にナゴヤドームで第8戦を行う。

 意地だった。1-1同点で迎えた6回1死、カウント2-3まで粘ると、中日井端弘和内野手(35)は変化球に食らいついた。打球は相手のグラブの先をかすめるように中前へ抜けていった。じつに今シリーズ20打席目での初安打で、ブランコの一時勝ち越し打を呼ぶ。不振にあえいでいた男が、やっと反撃の扉を開けた。

 延長15回引き分けに終わり「明日から2試合できるように、全打席、頑張ります」と振り返った。6月に目の異常によって離脱。リーグ優勝後に戦列に戻り、今シリーズでは初戦から先発で起用された。落合監督の「よく同じ実力なら若手を使うと言われるが、オレは逆に経験がある選手を使う。この世界は経験がものをいう世界だから」との信念からだった。しかし、4戦まで無安打で第5戦では先発から外されていた。

 移動日の前日5日、ナゴヤドームでの全体練習後だった。「どうする?」。井上打撃コーチに聞かれた井端は言った。「僕に気なんかつかわないで。やれ!

 って言ってください」。バットを持って再びグラウンドに出て、若手にまじって居残り特打を行った。

 「今年は何1ついいことがなかったから、最後の最後の最後の最後くらいいいことあるかなと思って…」。延長12回には、シリーズ2本目の安打を右前に。初回の同点劇につながる送りバントを含めて2つの犠打と、つなぎ役をきっちりこなした。シーズン中はアクシデントに悩まされ、そして晴れの舞台でも、もがき続けてきた。そしてこの夜、確かに光を見つけた。

 [2010年11月7日8時24分

 紙面から]ソーシャルブックマーク