魔球復活だ!

 中日山本昌投手(45)が来季導入される統一球で、伝家の宝刀スクリューボールの威力を取り戻す。愛知県内で選手会のゴルフコンペに参加。すでに来季用のボールを試投し、手ごたえを得たことを明かした。縫い目が従来のものより高く、スクリューを覚えた米国留学時代の公式球に感触が似ているのが強み。原点に返り、28年目のシーズンに乗り出す。

 球界のすべての投手が抱えているであろう不安を、山本昌は早くも一掃していた。来季から全球団で使用球が統一される。各投手は選手生命をかけて順応する必要に迫られる中、ベテランの反応は素早かった。シーズン終了後、鳥取市内のスポーツ施設「ワールドウイング」で行った自主トレに新統一球1ダースを持参し、試投していた。

 「縫い目が大きいかなというくらい。特に違和感は感じなかったな。慣れれば大丈夫だよ」

 ストレート、カーブ、スライダー…。あらゆる球種に関してすでに不安をぬぐい去っていた。それどころか、山本昌にとっては伝家の宝刀スクリューが威力を増す可能性も出てきた。

 87年に戦力外も同然で米国留学に出された山本昌は、1Aでめざましい活躍を見せ日本に呼び戻された。活躍の原動力となったのが、スクリューボールだった。練習中、同僚の内野手が何げなく投げていたのをまねしたのがきっかけ。以後、日本に戻って大活躍する山本昌の代名詞となった。

 

 新統一球は、国際試合に対応するために米大リーグの公式球に近づけて作られた。山本昌のスクリューにとっては「原点」とも言えるボールだ。縫い目が高ければ一般的に空気抵抗が増し、より変化が鋭くなることが考えられる。近年は投球に占めるスクリューの割合が減っているが、新しいボールによって、魔球が全盛時の威力を取り戻すかもしれない。

 今季は開幕前の故障で引退危機に追い込まれたが、8月から5勝を挙げて現役続行が決まった。それでも、来季も進退をかけたシーズンとなる。

 「この年になったらゆっくりなんてしていられないよ。早めに仕上げていかないと。ただ、今年はケガしたから、そこは考えないといけない」

 1月中にブルペン入りした今季よりもスローペースで仕上げる予定だが、準備にぬかりはない。統一球を“追い風”に、ベテラン左腕が28年目のシーズンへと向かう。【鈴木忠平】

 [2010年11月24日12時28分

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