【ホノルル(米ハワイ州)16日=鈴木忠平】守護神の座は渡さない!

 プロ野球名球会のゴルフコンペに参加した中日岩瀬仁紀投手(36)が、激しいチーム内競争に危機感を募らせた。前人未到の通算300セーブにあと「24」と迫るが、浅尾拓也投手(26)高橋聡文投手(27)の存在を強く意識。「来年は自分の居場所がなくなってもおかしくない」と、競争に勝ち続ける決意を語った。

 岩瀬は本人にしかわからない危機感を抱いていた。前日の名球会総会、そしてこの日のゴルフと2日間、偉大な記録保持者たちの空気に触れた。あらためて250セーブの尊さ、あと24に迫った300セーブの重みを実感した。ただ、記録よりも前に考えなければならないことがあった。

 「300セーブは目指すわけじゃないけど、1年間きっちり投げられればそこにいける。それよりも来年はしっかりやらないと自分の居場所がなくなりかねない。いつ何時崩れてもおかしくないから」。

 常勝軍団の守護神を1年間務めれば、おのずとセーブ数は積み重なる。それよりも、チーム内競争に勝つことが先決という。確かに原因不明の右腕のしびれが発症した昨季から、岩瀬のマウンドは時として不安を感じさせた。今季も右腕の状態が悪かった時期はリードした9回に同点に追いつかれた場面もあった。浅尾に9回2死まで任せるという継投もあった。42セーブは挙げたが、1勝3敗という数字は誇れない。白星も黒星もセーブ失敗を意味するからだ。

 森ヘッドコーチは「岩瀬の状態が良ければ当然、岩瀬がストッパーだ。ただ、岩瀬に何かあった時のために、代わりにできる選手を用意しておかなければならない」と話す。岩瀬が1年間フル回転するのが理想だが、浅尾や高橋が、いつでも代役ストッパーになれるように準備しておくという。幾多の修羅場をくぐり抜けてきた岩瀬だけに、チーム内の動きは察知している。37歳を迎える来季からは、勝利や自身の記録のためだけでなく、自分の立場を守るために戦う必要がある。

 名球会ゴルフの同じ組でラウンドした王会長を含め、多くの先輩から激励を受けた。何日も前から緊張しっぱなしだったが、新人恒例の始球式も無事に済ませた。大先輩たちが和ませてくれたおかげだった。

 「この2日間は本当に疲れましたが、逆にすごく気を使ってもらった。記録の重みよりも、人柄の重みを感じた。イメージよりもやわらかいというか…」

 そんな名球会にいる人間の多くが、チーム内での自分の立場を守りながら、記録を積み重ねてきた。ハワイでとびきりの刺激を受けた守護神が、偉大な記録に向け、足場を固める。

 [2010年12月18日10時13分

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