<中日5-4広島>◇1日◇ナゴヤドーム

 1週間できれいな身になった。落合竜が今季初の逆転勝利で借金4を完済した。3点差を7回までに追いつき、8回にトニ・ブランコ内野手(30)が決勝打。開幕からの出遅れで借金は4まで膨らんだが、わずか1週間で帳消し。3番森野将彦内野手(32)の送りバントが2日続けて決勝点に結びつくなど、昨季王者らしい「勝利の行進」が始まった。

 まるで再現VTRを見ているようだった。同点の8回、井端が出塁するとベンチは2試合連続で不振の3番森野にバントを命じた。1死二塁。前日は4番和田が決めたが、この日はさすがに広島ベンチが敬遠を指示し、5番ブランコに勝負の行方は託された。

 「和田さんはいい打者だから敬遠は仕方ない。きょうは僕が何とかしなきゃいけないと思ったよ」。

 チームの思いを背負ったブランコはカウント3-1から広島上野の真ん中に入ってきた変化球をたたいた。打球は痛烈に左翼線を破った。リーグ最低打率にあえぐ打線を救う一打。押し出しで1点を追加し、今季初の逆転勝ちだ。

 「昨日と同じゲームじゃないか。違うところは何にもない。昨日と同じだよ」。落合博満監督(57)は少し照れたように言うと、足早に会見場を後にした。広島のエース前田健に6回まで2安打に封じられた。3点を追いかける苦しい展開だった。だが、リリーフ陣が踏ん張るうちに7回に同点とすると、たたみかけるように勝ち越した。3番森野にバントを命じた指揮官が満足であるはずがない。ただ、いい状態の時ほど言葉が減るのが落合監督。口数の少なさの裏には少なからず、打線復調への手ごたえがあったはずだ。

 4月25日には最大4つあった借金をわずか1週間で完済した。開幕からの9試合を2勝6敗1分け。周囲の不安をよそに落合監督は「9連敗も考えていた。それからすれば御の字だ」と余裕を貫いていたが、まさに現実となった。

 「最初あまり勝てなかったから、今はみんな勝ちたいというアドレナリンが出ている」。

 主役になったブランコの言葉がチームの現状を物語っている。チーム打率が2割を切るなど手のうちようがなかった4月。荒木、井端、和田、そしてブランコと主力が次々と結果を出し始めた。

 ここ6試合中5試合でヒットを放っているB砲。前日はドミニカ共和国から来日したケニア夫人と久しぶりに再会した。「奥さんが来たので僕も落ち着くと思う。昨日?

 フライトの話をしたり、チューしたり、それから、いろいろ…ね」。そう言うと、意味深な表情でにやりと笑って報道陣を沸かせた。明るさも戻ってきた昨季王者。逆襲の5月を幸先よくスタートした。【鈴木忠平】