<楽天3-6ロッテ>◇2日◇Kスタ宮城

 今季から先発に転向したロッテ大谷智久投手(26)が、待ちに待った今季初勝利を飾った。ここまでの先発4試合は好投しながらも勝ち星なし。この日は中学生時代に覚えた「ナチュラルカット」を武器に楽天打線に的を絞らせず、7回1/3を2失点の好投。打線の援護も受けて、昨年4月以来のプロ2勝目を挙げた。孝行息子の活躍に、西村監督も満面の笑みだった。

 昨年4月25日以来となるプロ2勝目は、今季5度目の先発でつかみ取った。大谷は丸い顔をくしゃくしゃにさせて喜んだ。「本当にうれしい。やっと今シーズンが始まった気がする」。7回までは相手を4安打に抑える圧巻の内容。8回、走者を残して降板したが、文句なしの今季初勝利だ。

 天性の「カッター」が、楽天打線を幻惑した。大谷の持ち味は打者の手元で小さく曲がる球。純粋な「直球」はほとんどない。「自分はストレートと思って投げているけど、カット気味に変化をすることが多いですね」。原点は投手を始めた中学時代だった。手首を内側に切って投げる癖が自然とついた。名門・報徳学園でも直されず、今に至った。体に染みついた「ナチュラルカット」。これが大谷の生命線だ。

 両チーム無得点で迎えた4回1死二塁。ピンチを切り抜けたのも、この1球だった。聖沢にはほぼど真ん中。ガルシアには真ん中やや外。コースだけ見ればとんでもなく甘い球を、両者は仕留めきれなかった。内野ゴロ凡退。大谷は「どちらもカット気味のストレートです」と胸を張った。

 今季は防御率1・77の好成績。導入された統一球も好調の要因の1つだ。「ちょっと滑るけど、ボール自体がけっこう動いてくれる」と大谷。西村監督も「統一球になって、変化球のキレが良くなった」という。少年時代に覚えた「ナチュラルカット」が時代の流れに乗り、より切れ味を増した。まさに「統一球の申し子」といっていい。

 我慢して使い続けてきた西村監督は「何とか早く勝ち星をつけてあげたかった。本人が一番ホッとしているでしょう。こういう投球をすれば、まだまだ勝ちがつく」と自分のことのように喜んだ。孝行息子の快投でチームも3試合ぶりに4位へ戻った。【鈴木良一】