<中日0-5広島>◇17日◇ナゴヤドーム

 出たっ、150キロ!

 広島今村猛投手(20)が中日戦の6回から救援登板し、プロ入り最速の150キロをマークした。2イニングの打者6人に対し、4三振を奪う圧巻の内容で勝利に貢献。プロ2年目の今季は6月から中継ぎ陣の一角としてフル回転するが、これが09年ドラフト1位の力量だ。

 竜の戦意を完全に喪失させたのは20歳の今村だった。5点リードの6回。1死後にはもう、エンジン全開だ。和田を攻める。カウント1ボール1ストライクで外角146キロ直球で空を切らせる。さらにもう1球!

 最後は外角低めに速球をズバッと収め、バットは動かない。電光掲示板に「150」を刻んだ。

 今村

 完璧じゃない。ボチボチですよ。とりあえず「150」が出たので。もっと速い球を投げられればいい。自分の作った試合じゃない。先発の人がいい感じで後半まで持ってきてくれている。崩したくない。

 長崎・清峰高では最速152キロをマークしたが、プロ入り後は球威不足に悩んだ。6月から救援陣に配置転換されたのが転機だ。最近のリリーフ登板10試合、15回で自責3。防御率1・80と安定する。「とりあえず腕を振ることを心掛けています」。この日は直球の球威と制球、スライダーのキレともに抜群。7回も3者連続三振を奪った。

 指先の細やかな感覚を磨く工夫も生きている。オフタイムはダーツに興じる。18グラムのマイダーツを柔らかく持ち、ボードに狙いを定める。指先に全神経を集中させる作業は投球にも通じる。「いろんな投手がやっていますから。リリースの時に意識を集中させるんです」。リラックスしながらも、たえず向上心を持つ。

 大野投手チーフコーチも「球の速さが出てきて期待通りの投球。非常に頼もしい」と絶賛した。まだ高卒2年目。いずれは、先発の一角として期待される立場だ。4月にプロ初勝利を挙げ、この日、150キロも出した。それでも、今村は言う。「いまは中継ぎ。(中日)浅尾さんみたいに力で抑えられればいい」。与えられたポジションを全力で挑んでこそ、明るい未来は開かれる。【酒井俊作】