<日本ハム1-2楽天>◇25日◇札幌ドーム

 ダル撃ちだ、5連勝だ、3位浮上だ!

 星野楽天が15三振を奪われながらも、「無敵」の日本ハム・ダルビッシュを倒した。2回1死一、三塁で中村真人外野手(29)の遊ゴロの間に先制。同点で迎えた8回には敵失で勝ち越し、7投手の継投で1点差で逃げ切った。我慢して起用してきた選手らが力をつけ、星野監督就任後初の5連勝。残り41試合のタイミングで7月18日以来の単独3位に浮上し、09年以来のクライマックスシリーズ進出がみえてきた。

 打席に向かいながら、内村賢介内野手(25)は念仏のように心で唱えた。「ランナー三塁。転がせば何かが起きる。何かが起きる」。1-1の8回2死三塁。3三振を喫していたダルビッシュに、またもカウント2-2と追い込まれた。「目付けを高く」。低めの球に空振りを戒めて5球目、真ん中スライダーに当てた。快足を飛ばすと三塁小谷野がファンブル。泥くさくも、決勝の1点をもぎ取った。

 控室出口から帰りのバスまで20メートルほど。わずかな道のりに、星野仙一監督(64)が珍しく足を止めた。紡いだ言葉は情にあふれていた。「あれしかない点の取り方だ。ヒットだ。エラーじゃない。記録員は何を見ているんだ。代打は全然、考えなかった。(内村は)あれを乗り越えていかないと」。信頼のタクトを貫いた。

 昨秋の監督就任から約10カ月。ついにチームという“田んぼ”に植えた稲穂が、こうべを垂れようとしている。開幕前、プレー以外の物足りなさを感じ2軍に落とした内村がレギュラーをつかんだ。2日からの13連戦も唯一全試合スタメン出場。佳境に入ったころ「打たなくても使うぞ」と、声をかけた。「気が楽になりました」と内村。心のケアを忘れなかった。

 もう1つの稲穂は守りで大仕事をした。1-1の7回2死一塁、中田の大飛球を左翼中村がフェンス側へ走りながらダイビングキャッチ。同じく、7月に2軍落ちしたが「選手が監督のやり方に合う、合わないなんて言ったらダメ。野村監督にも言われたこと。監督が代わったからと、成績が変わる選手にはなりたくない」と言い切る。「あいつは怒っちゃいかん」と性格を見抜く新指揮官の下、実をつけようと必死だ。

 2回の先取点は逆方向への連打で走者をため、中村の遊ゴロの間に奪った。適時打ゼロで強敵を攻略したのは、実に今季82通り目のオーダーだった。だが監督は「悪いか?」と一蹴。固定メンバーが少なく猫の目はやむなし。でも、脇が仕事をする。「第1ストライクを打てとか口酸っぱく言ってきたことが徐々にできてきた。(代わりがおらず)打率1割台でも使うしかない。選手は恥ずかしいだろうが、下手でもシーズン中に練習して少しずつうまくなっている」と目を細めた。

 ちょうど2週間前は7連敗で借金11。「悔しくて気がおかしくなりそうだった」が「今日は、もういい」と思ったことは1度もない。それはダルビッシュ相手でも同じだった。2強から奪った今季初の5連勝に「よくやった。やればできるじゃないか!!」と野太い声を響かせた。全員の執念を結集し、再びAクラスにのし上がった。【古川真弥】