虎にも岩田にも負けはしません。FAで巨人に移籍した杉内俊哉投手(31)が10日、鹿児島・薩摩川内市内での合同自主トレを公開した。4年連続で合同トレを行う“愛弟子”阪神岩田稔投手(28)から対決姿勢を打ち出されたが、「もちろん勝ちにいかなきゃいけないですし、やるしかないですね」と涼しい顔で返り討ちを宣言。ソフトバンク時代に5勝1敗、03年日本シリーズは2戦2勝でMVP獲得の「虎キラー」ぶりを、「伝統の一戦」でもさらりと発揮する。

 選ばれし巨人の新「背番号18」の風格が、いきなり漂った。この日に公開した合同自主トレには「伝統の一戦」で対決するであろう阪神岩田もいた。岩田からの依頼を受けて、09年から4年連続で一緒に汗を流す“愛弟子”左腕は、“師匠”超えへの強い決意を表明した。だが、杉内の言葉は対照的だった。声のトーンを変えることなく、冷静に言った。「もちろん勝ちにいかなきゃいけないですし、やるしかないですね。どの試合でも負けたくないと思っていますので」。敵は岩田や阪神だけではない-。見据えるのは、もっと先だった。

 それでも「虎キラー」ぶりは群を抜いている。ソフトバンク時代、阪神戦は12試合に登板し5勝1敗、防御率1・84。03年日本シリーズでは2戦2勝でMVPにも輝いた。敵地でも昨年6月4日に8回2安打無失点と好投しており「昨年もすごくいい投球ができたので、特に苦手意識はない」。にもかかわらず「いい打線で気を抜くとこがないので、すごく怖いですけどね。それに負けないように」と油断することもない。

 そのすごみが、巨人には心強い。直近10年で対阪神の勝ち越しは2回のみで、ここ3年は五分。宿敵撃破は日本一へのポイントの1つになる。重圧も注目も半端でない「伝統の一戦」をも「子どものころ、よく見ていました。盛り上がっているのを覚えていますね」と心待ちにできる「虎キラー」は、頼もしい限りだ。

 移籍元年は「チームも変わりますし、やらなきゃいけないという気持ちは強い」と、プロ入り最速の3日から始動した。この日は、キャッチボールで直球とスライダーを織り交ぜるなど仕上がりも例年より早く「状態もコンディションもすごくいい」と笑った。「ローテーションを守るのは絶対だと思う。その中で期待に応えられるぐらい勝利数を稼がないといけない」。さわやかな表情の中に、自信がみなぎっていた。【浜本卓也】