いつも柔和な表情の日本ハム栗山英樹監督(50)が、闘将宣言で珍目標を掲げた。沖縄・名護キャンプの7日から、審判団が合流した。新指揮官は投手のセットポジションの動作など、細かい点を直接聞いて確認。シーズンに入れば選手のために盾となって、激しい抗議も辞さない考えを明かし、「1年で5回退場する」と驚き発言も飛び出した。

 さわやかイメージの栗山監督が、グラウンド上で武闘派に変身する。「1年で5回退場っていうのが目標。『この人なんでこんなに怒ってるんだろう』って思われるかもしれないけど、チームを守りたいし、勝ちたいんだっていうのを出さないと。選手にとってはその1打席、1球が野球人生で大きな意味を持つかもしれない」。チーム全員のため、先頭に立って戦うために、現役時代は1度もなかった退場も覚悟している。

 その思いは、現役時代の経験に基づいている。「この1打席でHのランプがつかなかったら(野球人生が)終わっちゃうと思ってやっていた」。年間通せば数多くある微妙な判定でも、真剣勝負をしている選手にとって、大事なワンプレーになる可能性がある。「一番つらいのは、選手が『えっ』っていう顔をしているのに、ベンチがノーリアクションでいること」。

 審判員への対応も“イメチェン”する。現役時代は「お願いしますよ~」と泣き落とし作戦が得意技だったというが「監督はそれではダメ。そこは大事な距離感。考えています」と、毅然(きぜん)とした態度で臨むつもり。審判にはヤクルト時代の後輩ら顔見知りも多いが「そこは大事な要素だから。選手を守るために盾になる」と、チーム以外への情も捨てる。

 この日合流した審判団へは、さっそく投手のセットポジションなど、ボークを取られそうな危険箇所をチェック。周囲からはベンチで際どいプレーを見る難しさを指摘されており、今日8日の紅白戦が監督として初めてベンチから見る実戦になる。冗談交じりに「(抗議を)紅白戦でやってみようかな」とニヤリ。

 シーズン5度退場となればかなりの“問題児”。それはオーバーとしても、これはそれだけの覚悟を持って公式戦に臨むという、栗山流の選手へのメッセージだ。伝え聞いた斎藤は「心強いですね。選手は(判定への不満を)表に出しづらい部分があるので。自分たちの気持ちも救われます」。チームを家族と表現する栗山監督だからこそ、ペナントのゴングが鳴れば、柔和な「栗さん」ではなく闘将にイメチェンする。【本間翼】

 ◆監督の1シーズン退場回数

 10年楽天ブラウン監督の4度が最多。同監督は広島時代の06年に3度、07、09年に2度記録し監督ワーストの通算12度。シーズン2度は76、83年日本ハム大沢監督、09、10年中日落合監督らが記録した。シーズン5度退場は選手にもおらず3度が最多で、88年バナザード(南海)90年ブリューワ(日本ハム)95年デューシー(日本ハム)04年ズレータ(ダイエー)06年ロマノ(広島、危険球2度)08年浅尾(中日、危険球3度)が記録。日本ハム前任の梨田監督は09年8月30日の1度(近鉄時代含め2度)のみ。栗山監督は現役時代は退場なし。