<オープン戦:阪神4-2日本ハム>◇10日◇甲子園

 開幕戦もろたで~。2年連続の大役が決定的なエース能見篤史投手(32)が、30日オープニングゲームの快投を予感させた。甲子園の12年初戦で先発し、死角ないマウンドさばき。和田監督は固有名詞をぐっと飲み込みながら、腹のうちで開幕投手を決めたことは明言した。聞くまでもない。能見に任せれば、白星発進間違いなしや!

 ピンチすら楽しんでいるように映った。得点圏に走者を背負った能見が集中力を高めた。3回。先頭陽岱鋼に左前打を許すと、鶴岡には珍しく制球の良さが影を潜め、四球を与える。送りバントで1死二、三塁。ここからが見せ場だ。変化球主体に田中を攻め、外角低めスライダーで体勢を崩して三飛に料理。金子誠にはカーブで泳がせ、左飛に抑えた。終わってみれば3回無失点。そして淡々と振り返る。

 能見

 シーズンでもピンチの状況がある。そういったとき、どうするか。そういうシチュエーションになって、オープン戦でしかできないこともある。自分で作って、そういう状況になった。(四球は)わざとじゃないですよ~。

 登板予定だった9日西武戦が雨天中止になり、スライド先発。当初、先発予定だった岩田を2番手に回して登板させるほど、能見の優先順位は揺るぎない。まさに「開幕投手待遇」の調整に、確立された投球術でこたえた。シーズン開幕への逆算に入っているかと問われると、語気を強めた。

 能見

 僕の中では入っています。しいて言えば、もう少し長いイニングを投げたい。昨日、雨で中止で仕方ないですが。

 実は2月23日紅白戦以来、実戦マウンドは中15日だった。試合勘が微妙な状態だったが、ひそかに、もう1つのテーマも課して甲子園初戦に臨んでいた。

 能見

 岡崎と組むことがほとんどない。どういうリードをするのか任せた。僕のスタイルもある。藤井さんもいないし(岡崎と)組んで分かることも多くある。捕手との共同作業。コミュニケーションを取りながら調整しないと、僕自身死んでしまう。

 藤井彰が離脱。正捕手不在の一大事で、岡崎とのバッテリーの呼吸をテストした。普段より変化球が多い配球にも首を振らない。「基本、先発はそこ(真っすぐ)から」という男が、あえて変化球を投げ続けた。次回登板は16日ロッテ戦が濃厚。金曜日登板を重ね、開幕へと一直線だ。もう迷いはない。女房が誰でも、相手がどう攻めてきても、2年連続開幕投手が強気の真っすぐを投げ込む。【酒井俊作】

 ▼能見は昨年4月12日広島戦(甲子園)に先発し、7回途中まで3失点で勝ち投手になった。今季も開幕投手を務め2年連続白星となれば、2リーグ分立後の阪神では08~10年の安藤以来5人目、6度目。左腕では江夏が70、71年、74、75年の2度記録して以来。なお阪神左腕投手の連続開幕投手は江夏(69~71年、73~75年)仲田(88、89年)湯舟(94、95年)星野伸(00、01年)井川(02~06年)に次ぎ6人目。