<オープン戦:阪神0-1ヤクルト>◇13日◇甲子園

 2000本安打まで25本に迫るヤクルト宮本慎也内野手(41)が、実戦9試合目で今季初安打を放った。6回2死二塁から、バットを折りながら左前に決勝適時打を運んだ。2月20日のオリックスとの練習試合で初打席に立って以来、直前まで16打数無安打だったが、ようやく18年目のシーズンが「スタート」した。今季、2000本安打達成射程圏にいるのは、宮本のほか、日本ハム稲葉ら7人。うち5人以上が同シーズンに達成すれば史上初になる。

 内角低めの直球に対し、宮本は即座に体を開き気味に変化して、振り抜いた。バットは折れたが、打球は阪神新井貴の頭上を越えて、左前に落ちる。二塁から俊足比屋根がかえって、先制点を挙げた。「ヤマを張りました。オープン戦はあまりやらないんですけど、あまりにも打ててないので」と配球を読み切った。

 18年目を迎えるベテランだが、この日の第2打席まで16打数無安打だった。本来、オープン戦の時期は球種やコースを読まずに、投手のボールに対して対応力を高めてきた。内角のさばきは、シーズン中から時折見せるスタイル。「若い時よりはましですけど、結果は出ないより出た方がいい」。ようやく出た1本に、安堵(あんど)の気持ちが広がった。

 2000本安打が懸かるシーズン。「個人の記録より、チームの優勝」と繰り返してきた。初めて試合に出場したのは2月20日のオリックス戦。例年より10日ほど早かった。「年を取ったんで、目を慣らした方がいい」と志願した。若手のアピール機会を減らさないように気遣い、最初は指名打者での1打席から、より多く打席に立ってきた。

 だが8試合、安打は出なかった。キャンプ直後の2日から続く長期遠征。直前の10、11日の広島戦はチーム本隊を離れて帰京。2軍選手とともにヤクルト戸田球場で打ち込んだ。「グッと振れるようになった」と、いい時の状態に近づいてきている。小川監督は「ヒットが出れば違う。オープン戦とはいえ、気持ちにゆとりが出る」と喜んだ。

 かつてチームメートだった日本ハム稲葉は残り34本。札幌遠征中には「同じ日になるんじゃない」と、冗談めかしたことがある。プロ入り初の月間MVPを獲得した昨年4月は、12日開幕ながら22安打を放った。順当なら「Xデー」は4月後半にも訪れる。「この時期は内容というけど、1日1本ぐらいは出た方がいい」というのが打者心理。気分よく、3月30日に向けて調整ピッチを上げていく。【前田祐輔】

 ▼宮本は同大からプリンスホテルを経て95年にヤクルト入り。開幕直後の4月5日には41歳5カ月となり、95年落合(巨人)の41歳4カ月を抜いて2000安打達成の最年長記録となる。2000安打は過去38人記録しているが、高校から直接プロ入りした選手が最多の21人。大学、社会人を経て入団は05年古田(ヤクルト)に次いで2人目だ。また、宮本の本塁打は現在59本。92年新井(近鉄)の86本を抜いて最少本塁打での大台到達は間違いない。

 ▼今年は宮本以外に稲葉(日本ハム)小久保(ソフトバンク)の達成が濃厚で、谷繁(中日)ラミレス(DeNA)も2000安打を目指している。これまで同一シーズンに達成は83年の4人(藤田、衣笠、福本、山崎)が最多で、一気に5人が到達すれば初めてとなる。