<巨人6-0オリックス>◇16日◇東京ドーム

 香川効果で決定力アップ!?

 8年目を迎えたセ・パ交流戦が開幕し、巨人がオリックスに快勝した。サッカー日本代表MFのドルトムント香川真司(23)が始球式に登場。すると1回、香川と親交があり、試合前には旧交を温めた坂本勇人内野手(23)が、中前先制適時打で口火を切る。高橋由の満塁弾も出て、一挙5得点。オリックスのエース金子への見事なカウンターで、試合を決定づけた。先発宮国が右肩の違和感で降板するアクシデントはあったが、4連勝で今季初の貯金1、3位に浮上だ。

 開始10分、坂本の決定力は香川のそれだった。1回1死二塁の第1打席。金子の外角直球を白木のバットで振り抜いた。高速ライナーが中前のピッチに刺さった。「パを代表する投手なので、甘い球は少ないと思っていました。いいカウントだったので積極的に狙って」と、カウント2ボールから狙い澄まし、ひと振りで逃さず仕留めた。「大きかった」先制打は、遠くドイツ、ドルトムントでのし上がった香川の姿と重なった。

 初めて東京ドームを訪れ応援してくれた香川に、坂本は野球の奥深さを披露した。藤村が盗塁を決めた直後の5回無死二塁。セーフティーバントを試みた。三塁手バルディリスの深い守備陣形を見て、空間に球を出した。間一髪アウトも藤村が三進しアシスト成功。ダメ押しの6点目を導き出した。7回無死のランニングスローを筆頭に「練習の通り出来た」、ショートストップの足運びも申し分なし。ドルトムントの黄色、でなくオレンジに染まったスタジアムで、チームの要は暴れた。

 坂本と香川。2年前の年の瀬、香川が幼少から巨人ファンという縁があり、対談する運びとなった。関西出身の同い年。意気投合した。香川がゴールを決めれば坂本はすぐメールを送り、数十分後にはお礼の返信がある繰り返しだった。正月には「ドイツに試合を見においでよ」と誘ってくれた。坂本は練習があり願いはかなわなかったが、もらった黄色いユニホームを自宅テレビの上に飾り、いつも応援していた。競技は違えど互いに刺激し合う中で、友情を育んできた。

 日本が誇るストライカーに成長すると、もう親友になっていた。この日早朝に帰国した足で、東京ドームに来てくれた。昼下がりに久々の再会。「サッカーとは違うスタジアムで、すごい舞台でやっている。格好いいな」は香川の本音で、「ホームランをプレゼントしてもらいたい」とお願いされた。坂本は「交流戦、優勝を目標にする。すごい大事な交流戦。すべてをかけるつもりでやっていきたい」と返した。香川がドイツで成し遂げた大仕事を、そのまま巨人でやってみせる。

 代わって満塁アーチを見せてくれたのは高橋由だった。坂本は坂本らしく、本拠地の芝で躍動した。「1本しか出なかったですけどね。勝って良かったですよ」と、共通項である人懐こい笑顔だった。トップアスリート同士にしか出来ないやり方で、23歳の友情が深まっていく。【宮下敬至】