<コナミ日本シリーズ2012:巨人4-3日本ハム>◇第6戦◇3日◇東京ドーム

 巨人原辰徳監督(54)が3年ぶり日本一へと導いた。3勝2敗で迎えた第6戦。負傷の阿部、長野を先発起用する総力戦で接戦を制した。今季はレギュラーシーズンを独走で優勝すると、クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージでは中日に3連敗を喫しながら3連勝して突破。日本シリーズでも一時は2勝2敗のタイに持ち込まれたが、最後は底力を見せて頂点に立った。

 苦しみ抜いて、登り切った。1点リードの9回。山口は2死一、二塁とピンチを招く。しかも打席には難敵糸井。ただ、そこから踏ん張った。最後は遊ゴロに仕留めて、日本一だ。東京ドームの胴上げで、11度、宙に舞った。原監督は、お立ち台で「日本シリーズは格別の、異次元のすごい世界だと思います。したがって感激も非常に大きいです。ジャイアンツファンの温かい声援の前で感無量です」と声を張り上げた。

 「これからもう一山、もう二山待っています」と語ったのは9月21日。リーグ優勝を決めた東京ドームだった。ペナントレースも、V率0%の「借金7」から巻き返しと、大きな山を越えてきた。「一番難しい山」という位置付けのペナントを制しても、なお、大きな山がそびえていた。

 杉内離脱。「巨人の18番」が、左肩の違和感のため、シリーズも登板回避を余儀なくされた。

 10月30日、札幌。日本ハムに初黒星を喫した試合後のことだ。杉内の第5戦先発が可能かどうかの最終会議があった。予定していたCSでの復帰はかなわなかったが、3度のブルペン投球を行っていた。「真っすぐは135キロ出ないでしょう。球数は50球が限界です。もし先発する場合は、試合開始からバックアップ要員の準備が必要です」。最終報告は芳しくなかった。やっぱり無理か、の空気が充満する中で、原監督は言った。

 原監督

 何とかならないか。1年間、みんなで戦ってきたんだ。最後まで、一緒にやってきたみんなで戦い抜きたい。

 100%ではない選手を起用することは、周囲の負担が増すことを意味する。登板回避は合理的な選択といえる。ただ、斎藤投手コーチは原監督に同調したという。ともに、巨人一筋の指導者。特に大きな勝負では、個ではなく、チームを優先する鉄則。脈々と受け継がれてきた巨人軍のDNAだった。

 内海を中心とした投手陣は、18番の離脱を完全にカバー。主将阿部も札幌で欠場したが、それも全員の底力でカバーした。ケガを押して決勝打を放った阿部について原監督は「これはジャイアンツ魂だと思います。ショー・ザ・スピリッツをみせてくれたと思います」と絶賛した。

 いくつもの山々を越えて頂点に立った。「どんな場面でも、どういうチーム状況でも、自分を疑わずに、そしてチームを最優先にして堂々と戦ってくれた姿は、未来永劫(えいごう)歴史に残る選手だと思います」と原監督。頂で見たナインは光っていた。それは、涙のせいばかりではない。【金子航】

 ▼巨人が09年以来、22度目の日本シリーズ優勝。原監督は4度目の出場で、02年西武戦、09年日本ハム戦に次いで3度目日本一。日本シリーズで3度以上優勝した監督は9人目で、巨人では11度の川上監督、4度の水原監督(水原監督は東映でも1度優勝)に次いで3人目だ。原監督のシリーズ通算成績は15勝8敗で勝率6割5分2厘。シリーズで15勝以上している8人のうち、勝率は川上監督の7割1分、三原監督の6割7分9厘に次ぎ3番目に高い。