プロアマ関係が劇的に雪解けした。日本学生野球協会が17日、都内の日本野球機構(NPB)でプロ側と協議し、プロ経験者が高校の監督などの指導者になるための規定「中学、高校で2年の教諭歴」を撤廃し、座学によるプロ側、アマ側2度の研修を受ければ資格を認めるという条件緩和案をプロ側に示した。早ければ今年中にも正式決定する見通しで、昨季限りで引退した元レイズ松井氏ら、元プロ選手の高校野球指導の枠が一気に広がった。

 高かった元プロの高校野球指導の壁が、一気に緩和される。これまでは2年間教諭として教壇に立つことが必要だったが、教員免許の取得は必要なくなる。プロ側が主催する研修、アマ側が主催する研修の2種類を受ければ、学生野球資格回復が可能になる。実技や実習を取り入れる予定はなく、研修は座学のみ。各団体の理事会などを経て、すべての制度が決定すれば、早ければ今年中にも新制度による資格回復者が出る可能性が出てきた。

 研修内容は5月をメドにプロアマ双方から持ち寄り詳細を詰める予定。日本学生野球協会・内藤雅之事務局長は「NPBは1日か1泊2日かは分かりませんけど、我々学生は8項目ありますから、1日8時間とは考えにくい。はっきりしたことはこれからですが、2~3日はかかる」と見通しを示した。退団後2年だった期間が、計5日程度で研修は終了する。学生野球資格を回復すれば、翌日からの監督就任も可能になる見通しだ。

 劇的な期間短縮で、プロ野球選手にとっては、引退翌年の監督就任が可能になる。昨季限りで引退を発表した元レイズ松井氏の、母校星稜(石川)監督就任も現実味を帯びる。PL学園(大阪)で甲子園を沸かせた元巨人桑田氏が、指導者になって甲子園に出場する夢も広がる。日本高野連のプロアマ健全化委員会・西岡宏堂副委員長は「(プロ選手が)高校野球に恩返ししたいという思いも聞いていたし、そういう行動をしている。シンポジウムも10年になりました。恩返ししたいという思いを素直に受け止めました」と話した。

 研修の導入は、昨年4月に行われた「学生野球資格に関する協議会」でプロ側から提案を受け、この日の回答になった。かつてプロ野球と学生野球が断絶に至った経緯はプロ側の研修で説明する。学生野球資格回復の申請者は、各球団の推薦を必要とし、球団側も指導者就任後の責任の一端を背負う制度とした。

 学生野球資格を回復すれば、高校、大学とも指導が可能になる。日本ハム阿井ヘッドコーチのように、高校の指導者からプロの指導者になった場合の資格回復については、今後の検討課題とした。日本高野連は24日に行われる全国9地区の理事懇談会や、3月21日の理事会などで各県高野連に理解を求めていく。

 ◆柳川事件

 プロ、アマ間の関係が悪化するきっかけとなった事件。プロ野球は1961年4月、前年まで日本社会人野球協会と締結していたプロ退団者の登録時期や人数に関する協約の締結拒否を決定。直後に中日が日本生命の柳川福三外野手と契約した。一方的なプロ側の行為に対し、アマ側はプロ退団選手の社会人選手としての受け入れ拒否を決めた。