<巨人5-4ロッテ>◇15日◇東京ドーム

 右ではもう打てない。だから左で打った。巨人立岡宗一郎内野手(22)が新境地を切り開き、サヨナラ勝ちをお膳立てした。9回無死一塁。ロッテ守護神の益田の直球に無我夢中で食らいついた。「100%バントだと思いました。でも『打っていい』と言ってくれた監督の期待に絶対に応えたかった」。気合を込めた一打は、二塁手根元のグラブをはじく内野安打でプロ初安打をマークした。

 苦しんだ過去からの脱却を宣言する一打だった。昨年6月にソフトバンクからトレード移籍。直後の7月に、試合中の交錯プレーで左肘靱帯(じんたい)を断裂した。リハビリ生活を経て復帰したが、今度は秋季練習中に左足首の靱帯を損傷し、松葉づえ生活を強いられた。「もう野球ができなくなるんじゃないかと思っていた。本当に長かった。ここまで来られたのが夢のようです」。夢ではない。自らの力で現実にした。

 まだ、8カ月しか立っていない左打席で放ったプロ初安打。昨季のフェニックスリーグから左打ちに切り替えた。「フォロースルーで痛みが出るので、もう右で打てない。左にするしかないから左にした」。そうするしかなかった。「中学生のときにかじった程度」の左打ちだったが、同リーグで打率3割超をマーク。真っ暗なトンネルの中でやっと光が見えた。

 試合前の予言も的中した。「僕は9時半ぐらいですかね」。7回の代打から途中出場し、プロ初安打を放った2打席目は午後9時12分。同17分にサヨナラのホームに滑り込んだ。歓喜の輪の中で真っ黒に日焼けした立岡の顔に白い歯が光った。【為田聡史】

 ◆立岡宗一郎(たておか・そういちろう)1990年(平2)5月18日、熊本県芦北町生まれ。熊本・鎮西高から08年ドラフト2位でソフトバンクに入団。10年8月に代走でプロ初出場。12年6月にトレードで巨人に移籍。球団発表は右投げ右打ちも、現在は左打ち。年俸600万円(推定)。家族は両親と姉。趣味は釣り。181センチ、83キロ。血液型はA。