<中日2-1オリックス>◇6日◇ナゴヤドーム

 これぞ“すくい投げ”だ。中日山井大介投手(35)が7回1失点の好投で、待望の今季初勝利を挙げた。先発では実に1年1カ月ぶりの白星だった。エース吉見に続き、4勝を挙げているカブレラも骨折で離脱。先発陣コマ不足の苦境で、開幕からずっと苦しんでいた実力者がようやく結果を出し、明るい光をともした。連勝で3位浮上。借金9ながら、高木守道監督(71)も「いよいよAクラスか」とニヤリだ。

 頼れる山井が帰ってきた。ウルトラマンのようなゴーグルがトレードマーク。地球を救うヒーローよろしく、苦しい先発陣に光をともす“すくい投げ”だった。先発では自身1年1カ月ぶりの白星。チームの先発投手に勝ちがつくのも5月15日日本ハム戦(ナゴヤドーム)の山本昌以来、実に16試合ぶりだった。

 「開幕からチームに何ひとつ貢献できていなかったので良かった。全球種でカウントが取れたので、自分のペースで投げられました」

 0-0の7回に1点こそ失ったが、続くピンチで2番深江をこん身の144キロ直球で見逃し三振に仕留めて切り抜けた。これが、その裏の森野の逆転2ランを呼び込む。同様に開幕から苦しむ同い年のスラッガーの援護に「少し涙が出そうになりました」。チームに攻撃のリズムも生むテンポの良い投げっぷり。打ってはチーム唯一のマルチ安打の活躍だった。

 昨季は救援&抑えで大活躍したが、今季は日本代表候補に入ったWBCの公式球が合わず調子を崩した。代表からも漏れ、開幕後は不振で2度も2軍再調整を経験。「心の問題」と分析した今中投手コーチから、先発再転向の指示を受け、ようやく本来の姿を取り戻した。「ずっと苦しかった」。胸の内を吐露した男の右のおしりポケットは、待ち望んだ勝利球で膨らんでいた。

 本来のボールと本来の自分を取り戻した。試合後の「山井大介のスタイルはしっかりストレートを投げ込むこと。そうでないとスライダー、フォークも生きてこない」という力強いコメントがそれを裏付ける。今中投手コーチからは「(ローテの)軸で回ってもらう。それくらいの内容」という高評価も勝ち取った。

 借金9はともかく、リーグ3位浮上。守道監督も「いよいよAクラスか。運も向いてきた」。山井の復調は、浮上を目指すチームの原動力となる。【八反誠】