<阪神4-3広島>◇29日◇甲子園

 阪神がサヨナラ勝ちで3連勝だ。同点の9回裏2死一、二塁から大和内野手(25)がプロ初のサヨナラ打となる左翼越え二塁打を放った。4回には反撃の1点を呼ぶ盗塁を、5回には同点のセーフティースクイズを決めた。地元の鹿児島・鹿屋市内から応援団が駆け付ける中、大技小技で大暴れの1日だった。これで阪神の6月のホームゲームは6戦全勝で、そのうち4試合がサヨナラ決着。首位巨人が敗れたため、ゲーム差は1・5となった。

 大和は内角直球を強振した。同点の9回2死一、二塁。打球は前進守備の広島ルイスの頭上を越えた。野球人生初のサヨナラ打だ。「やっちゃいましたね。なんか変な感じです。わざわざ鹿児島から応援に来てもらったんで、なんとかいいところを見せようとは思っていましたけど…」と照れた。

 一塁側アルプス席には父利和さん、母やよ子さん、嶋田市長ら地元の鹿児島・鹿屋市から計70人の応援団が駆け付けていた。フェリー「さんふらわあ」で移動した44人は前日28日の午後6時に鹿児島・志布志港を出発し、14時間かけて午前8時に大阪・南港到着。アルプス席最上段には「0

 キバレ!

 大和」と書かれたボードが揺れていた。

 四球で出塁した4回には二盗に成功し、マートンの適時打で生還した。1点を追う5回1死一、三塁では、ヘッドスライディングで一塁内野安打となるセーフティースクイズも決めた。最後は9回2死一、二塁から劇的な殊勲打。応援団に感謝の伝え方は完璧だった。

 幼いころ、現在のヤフオクドームで初めてプロ野球を球場で観戦した。ダイエー-西武戦。「清原さんに秋山さん…。清原さんは足が長くて、体がものすごくでかくて。これがプロなんだと、ご飯をいっぱい食べるようになりました」。球場で父利和さんが撮影した写真は今も実家に保管してある。樟南高をへて阪神に入団して8年目。今や当時憧れた立場となって、地元や多くの子どもたちに活躍する姿を届けている。

 サヨナラ勝利を見届けた両親ら故郷の人たちは、神戸港からフェリーで大分港に向かった。「こんなにうれしいことはない。本当に良かった」。首位巨人追走へ、2日連続の3点差逆転勝利。虎には熱い魂を持った2番打者がいる。【佐井陽介】