<阪神0-6DeNA>◇13日◇甲子園

 DeNA藤井秀悟投手(36)は右手にはめたグラブをちょっと挙げただけだった。130球目で新井貴を遊ゴロに仕留めた。ヤクルト時代の02年4月18日、横浜戦(神宮)以来の完封にも表情は涼しげだった。暑い甲子園での好投を「松坂のすごさを体感しました。高校球児に比べれば僕なんかまだまだです」と、照れで隠した。

 修正能力が光った。立ち上がりからボールが高かった。1回は鶴岡が2つ盗塁を刺してくれおかげで乗り切った。3回までは毎回の4安打。4回からは意図的に低めに投げた。腕を振り切っても直球、変化球とも低めに行くようになり、7回まで4イニング3者凡退。5点の援護をもらって完投を、8回のピンチを脱して完封を意識した。

 初黒星が5月25日で、それまで8試合は「不敗神話」を誇っていた。ところが逆に6月8日からは5試合勝ち星に恵まれなかった。「調子自体には波はないんです。ただ結果には波が多かった」と表現した。「長かったけどトレーナーさんが体をケアしてくれて感謝です」。

 最下位からの浮上はならなかったが、3連敗となればズルズルいきかねなかった。中畑監督は「秀悟はいいジンクスを持っているね。必ず点が入る。こんなすてきな勝ち方があったんだ」と、手放しで褒め喜んだ。4月27日、藤井自身が持つ連続先発途中降板という不名誉な記録を107試合で止めたのも阪神。14日の先発三浦とともに虎キラーの左右両輪に名乗りを上げた。【矢後洋一】

 ▼藤井がヤクルト時代の01年6月17日広島戦、02年4月18日横浜戦に次ぐ3度目の完封勝ち。11年ぶり完封勝ちは、37年4月16日金鯱戦の後に48年7月5日大陽戦で記録した藤村富(阪神)と87年8月28日ロッテ戦の後に98年9月6日ダイエー戦で記録した横田(西武)に並ぶ完封勝ちの最長ブランクとなった。