<阪神0-3広島>◇30日◇甲子園

 1カ月ぶりの甲子園、決意の再出発がこれじゃ、気休めにもならない。4番鳥谷、三塁西岡。打順もシフトも改造して臨んだ仕切り直し。力ない飛球が二塁打になった阪神マット・マートン外野手(31)のワンプレーからメッセンジャーが踏ん張れず2回に3失点。新生打線はつながらず18度目の無得点負け。東京ドーム3連敗のダメージがありありの惨敗、巨人とはワーストタイ、超絶望的な9ゲーム差だ。

 結果的に、敗戦を象徴するプレーとなってしまった。2回、広島キラの打球が左翼線へフラフラと上がった。左中間寄りに守っていたマートンが追ったが、打球は落ちた。

 問題はここからだった。マートンが打球をゆっくり処理している間に、キラは二塁へ。突進に気づいたマートンがあわてて送球したが、間に合わず二塁打となってしまった。

 「落ちてからのプレーで間違ってしまった。自分の位置とかボールの距離とかを考えて、打者が二塁にいくものだと思いこんでしまった。二塁打だと決めつけてしまったので、ああいうプレーになってしまった」

 マートンは思い込みによるミスだと反省した。マウンドではメッセンジャーが、なぜだ、と言わんばかりに手を広げていた。マートンの説明を聞かない段階では、本人以外の目には“怠慢”にも見えてしまうプレーだった。ここからメッセンジャーは先制打を浴び、投手野村にまで適時打を浴びるなど致命的な3点を失った。

 「起こるべきではないことが起こってしまうのが野球だから」

 試合後は冷静に振り返った11勝右腕だが、ワンプレーで気持ちが切れてしまったかのようだった。

 「マートンが遅いというより能力の範囲ということ。決して怠ってのプレーじゃない。ポンポンといけば、際どいプレーになったかもしれないけど…」

 和田監督はマートンを責めなかった。ただ山脇外野守備走塁コーチは「難しくはない。いけへんと決めているということや」と“心の空白”を指摘した。

 前日の巨人戦。マートンは1回、頭上を越えるかという村田の打球を背走して好捕した。フェンスに激突して「ドーン」という音がドームに響き渡ったほどだった。チームを救った闘志あふれるプレーと、この日のプレーには温度差があるように映った。

 3連勝と意気込んで乗り込んだ東京ドームで3連敗。指揮官は切り替えの重要性を説いたが、かけていたものが大きければ大きいほど、反動もある。一夜明け、1カ月ぶりに戻ってきた甲子園では、組み替えた打線も広島野村に8回3安打と沈黙。集中しきれていないように見えるプレーもあった。やはり、巨人戦3連敗のショックは大きいのか…。そう思わずにいられない敗戦だった。【鈴木忠平】

 ▼阪神の首位との9ゲーム差は8月14日広島戦(京セラドーム大阪)に敗れて以来で今季ワーストタイ。前回はその後4連勝が2度あり9日後に5ゲーム差まで詰めたが、27日からの4連敗でまた離された。