巨人が最大限の誠意を見せる。西武からFA宣言した片岡治大内野手(30)に、背番号8を用意していることが15日、分かった。原辰徳監督(55)が現役時代につけた番号というだけでなく、巨人では高田繁、仁志敏久、谷佳知といった右の好打者がつけてきた番号。その系譜を継承してもらいたい考えだ。

 契約年数や金額だけでは伝わらないものがある。巨人の片岡獲得への熱意は、ユニホームの背中にあった。栄光の8番。谷の退団で空いたものだが、原監督も現役時代に背負った、愛着のある番号。現場もフロントも、ふさわしい選手にしか、つけて欲しくない考えがある。その番号を片岡のために空けておく。

 そこには原監督の意思も込められる。FA選手が公示された14日に、原沢敦球団代表兼GMが会見し、監督が交渉に同席することはないと明言したものの「監督の言葉を伝えることはある」と言った。背番号8とともに伝えるのは、原監督の片岡への高い評価。チームに飛び込んで来てもらうにあたって、少しでも不安を取り除いてほしい狙いがある。

 原監督は08年の日本シリーズで対戦した時から、片岡を高く評価していた。第7戦、1点リードの8回、片岡は死球でガッツポーズしながら出塁。盗塁と犠打で三塁に進み、1死三塁から中島(現アスレチックス3A)の三ゴロの間に「ギャンブルスタート」でホームへの生還を決めた。巨人にしてみれば、片岡1人に同点にされ、試合の流れを持っていかれた感すらあった。敵ながら、「あっぱれ」という見方があった。

 翌09年のWBCを率いた原監督が片岡をメンバーとして選出したのも、緊迫した場面で仕事をこなせる打撃と脚力。そしてハートを評価してのことだった。同大会で片岡は、内海、山口、阿部、村田、亀井らとともに連覇に貢献。そのメンバーは今の巨人の中心となっている。指揮官ももちろんだが、真剣勝負を勝ち抜いた仲間の存在は、片岡にとってもプラスになるはず。

 巨人の「エイトマン」にふさわしい男として、その輪に加わることを望んでいる。

 ◆片岡治大(かたおか・やすゆき)1983年(昭58)2月17日、千葉市生まれ。宇都宮学園(現文星芸大付)3年夏に甲子園出場(2回戦敗退)。東京ガスを経て04年ドラフト3巡目で西武入団。最多安打(08年)盗塁王4度(07~10年)ベストナイン(08年)。09年WBC日本代表。176センチ、82キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸9500万円。背番号7。