今季活躍した選手らを表彰する「2013プロ野球コンベンション」が26日、都内のホテルで開催され、

 プロ野球新記録の60本塁打を達成したヤクルトのウラディミール・バレンティン外野手(29)が、セ・リーグの最優秀選手(MVP)に初選出された。最下位チームからの選出は史上初で、ヤクルトからは01年ペタジーニ以来7人目となった。

 バレンティンはオランダ領キュラソー島での祝賀パレードなどを終えてこの日に再来日し、球団納会とレセプションを掛け持ち。29日の帰国まで取材などで大忙しだが、来季の一塁コンバートに向けて準備を進めるなど抜かりはない。

 日本プロ野球の歴史を塗り替えたバレンティンが、新たな「史上初」を手にした。60本塁打の偉業が認められ、最下位ながらMVPに選ばれた。最下位から選出された選手は、過去に1人もいない。「特別な賞だと思っている。最下位から選ばれた意味は大きいと思うし、チームのためにベストを尽くした結果だと思う」と喜んだ。

 一方で、悔しさもある。一時は「3冠王」を射程圏内にとらえたが1冠に終わった。「最後の最後まで手に届くところに来ていたが届かなかった」。オランダ代表の主力として出場した3月のWBCでは左内転筋肉離れで、開幕には間に合わず。シーズン終盤は左アキレスけん痛に苦しんだ。「けがで遅れなければという思いもあるが、すべて神がくださったもの。来年頑張りなさいという意味に受け取っている」と言うが、144試合フルに戦えればとの思いは打ち消せない。

 そのためにも、来季は一塁コンバートに挑戦する。小川監督は「最終戦の時に『(来季は)ファーストで』って話をした。興味あると。来年やる方向でいくから準備してくれと言っている。できなかった時も想定して布陣を考えないといけない」と構想を明かす。一塁に回れば外野の守備力アップが見込めるうえ、バレンティンの下半身の負担を軽減させ、打撃に専念させることも可能になる。一石二鳥どころではない。

 指揮官の期待に応えたいという意識は高い。祝賀パレードでキュラソー島に帰郷中、チャリティーのソフトボール大会が開催された。バレンティンは一塁の守備についたという。「ファーストを守ったんだ。準備はしているよ」とドヤ顔。来年2月の春季キャンプでも「いっぱい練習する」とやる気をみなぎらせた。

 この日は午前9時半に再来日し、そのまま球団納会、レセプションとこなした。29日の帰国まで、テレビ収録など取材ラッシュが続く。「(疲れは)スコシ」「ネムイ」と苦笑いしつつ、来季について聞かれると眼光を鋭くした。「今年ベストを尽くしてやったように、ファンが喜ぶ活躍をして、裏切らない成績を残したい。トリプルクラウン(3冠王)そして日本一が目標になる」。来日3年で手にできていない、2つのビッグタイトルを熱望した。【浜本卓也】

 ▼バレンティンが最下位チームの選手では史上初めてMVPを獲得した。優勝チーム以外のMVPは08年の岩隈(楽天)以来14人目(16度目)で、セ・リーグでは王(巨人=64、74年)に次ぐ2人目。外国人選手では1リーグ時代の37年秋のハリス(イーグルス)以来となった。