広島前田健太投手(25)が10日、広島市内の球団事務所で契約更改交渉に臨み、メジャー挑戦希望を明言した。海外フリーエージェント(FA)権を取得するのは早くても2017年シーズン中。球団は絶対的エースの夢に一定の理解を示し、早ければポスティングシステム(入札制度)を行使して来オフにメジャー挑戦を目指す可能性が出てきた。契約は7000万円増の単年2億8000万円でサインした。(金額は推定)

 前田健は慎重に言葉を選びながらも、はっきりした口調でメジャー挑戦への思いを明かした。

 「来年に関しては契約しているカープのために頑張りたい。ただ(メジャーに)憧れがない、行きたくないと言えばウソになる。憧れはあるし、行ってみたい気持ちもある。チームにとっても自分にとっても、プラスになる形で迎えられたらと思う」

 22分間の交渉でも球団側に希望を伝えた。「そういう話は今日が初めてじゃない。こういう場じゃなくても昔からしていた」と経緯を説明。ポスティングシステムの新制度がほぼ固まり、希望を表明できる状況が整ったという認識だ。

 今年3月のWBCでは計15回を投げ、防御率0・80。「昔から憧れはあったけど、国際大会に出たことがなかった。WBCでそれなりの結果を出せて、気持ちが強くなった部分はある」と胸中を説明した。

 わがままを通すつもりはなく、「自分がいい時に挑戦したいという思いはある。野球人生、ずっとやれるわけじゃない。いい時に行けば良かったと後悔したくない」と話す。早くても国内FA権取得は16年シーズン中。海外FA権取得となれば、17年まで待たなければならない。

 「僕が行きたいと言って行けるわけじゃない。球団との話し合いになるし、まだまだこれから」と現状を把握した上で「チームに恩返しできる形がベスト」とも話した。広島側に入札金が渡る制度の利用を視野に入れ、メジャー挑戦を目指す。

 広島松田オーナーは制度利用について「今はまったく考えていない。(メジャーへの思いは)夢と理解している。我々だけの問題じゃない。夢に理解はあるが、ファンの理解があるか。いつ行かすかは言えるわけがない」と明言。慎重な姿勢を見せる一方で「みんなが送りだそう、いいチャレンジをしてこいという機運が高まれば、考えないこともない。我々も考えないといけない時が来るかもしれない」と含みも持たせた。

 楽天田中の場合、今季無傷の24勝から日本一に導き、メジャー挑戦に対する周囲の理解は一層深まった。23年ぶりのV奪回か、それとも…。機運が高まれば、早ければ来オフにメジャー挑戦する可能性が出てきた。【佐井陽介】