静かで、決意の詰まった日本一宣言だった。巨人長野久義外野手(29)が27日、東京・大手町の球団事務所で契約更改交渉を行い、2000万円増の推定1億8000万円でサインした。10月28日に93歳で死去した川上哲治氏が認めた最後の好打者は、亡きがらを前に奮闘を誓っていた。巨人軍の伝統を受け継ぎフラッグを奪い返す。巨人は日本人全選手の来季契約を完了した。
神妙な大トリ更改になった。長野は「期待に応えられず悔しい。僕の実力不足がすべて」と反省の言葉を並べた。シーズン中盤に復調し、2000万円増の評価をもらったプロ4年目。それでも「日本シリーズに負けた。ふがいないです」と表現した。目標を問われても「僕個人のことはいいです。こっそりやります」と遠慮した。「チームの日本一が目標です」と、ここだけは大きな声で強調した。
本音だった。12月2日、川上哲治氏のお別れ会に出席した。大先輩である「打撃の神様」と初対面した。数少ない現役選手の出席だった。死去が公となった10月30日には、日本シリーズ第4戦が行われた。6-5で楽天を競り落とし、対戦成績を五分に戻した。3安打で勝利に貢献した長野は翌朝、自分を報じる報道の一節に絶句した。
川上氏
今の巨人のバッターで、一番いいのは長野だ。あの外角打ちの技術はすごい。あれだけ離れて立っているんだから。阿部、坂本よりも長野だ。
V9監督に名指しで評された最後の選手になった。
楽天に王手をかけられた11月1日、仙台だった。「なぜ、僕なんかの名前を。覚えていただいているだけでありがたいのに。今、調子は今年で一番いい。必ず打って、勝ちます。阿部さんを助けたい」と吐き出した。普段は無難なコメントしかしない。神様に背中を押され、自分を奮い立たせ、不振の主将をアシストする覚悟まで定めた。
長野は振り返った。「あの言葉をいただいて、直接、手を合わせたかった。『ありがとうございます。頑張ります』って」。巨人の生え抜きは、30歳ころを境に、成績もチーム内での存在感も、グッと上のレベルにいく。来季30歳。川上氏の言葉を胸に宿した長野が、日本一奪還の旗振り役となる。【宮下敬至】



