<広島3-1阪神>◇16日◇マツダスタジアム

 逃したドラ1は、やっぱりすごかった。阪神が広島ドラフト1位大瀬良大地投手(22)にプロ初勝利を献上し、今カードでの奪首は夢と消えた。好調だった打線が7回5安打にひねられ、連勝は6でストップ。ドラフト1位指名した新人投手との先発対決で敗れたのは27年ぶり。かつての恋人にやられたショックなんて切り替え、今日から再び連勝街道や!

 虎がほれた男は、やっぱり男前だった。12球団で唯一3桁得点の猛虎打線に立ちはだかったのは、コイの黄金ルーキーだった。8日ぶりの黒星。うまく操られ、雑草新人岩崎を援護できなかった。奪首に失敗。6年ぶりの7連勝もならなかった。快調だった阪神特急は、6つスルーして停車。昨年も7連勝には2度挑んではね返されたが、「三度目の正直」といかず、和田豊監督(51)は静かに受け入れた。

 和田監督

 (大瀬良は)オープン戦の頃よりも球は強くなっていた。左打者のカット(ボール)が邪魔になっていた感じがしたね。

 因縁の相手に記念星まで差し出した。マウンドにいたのは、昨年のドラフトで1位指名した大瀬良だった。和田監督が左手で「赤い糸」を外した右腕は、気合十分。1、3、4回と得点圏に走者を進めたが、要所では闘志満々だった。力強い直球にカットボールを織り交ぜて連打を許さない。2度対したオープン戦以上に、虎も恋した真価を十分に見せつけてきた。

 関川打撃コーチ

 オープン戦よりボールの力もあるし、まとまっていた。VTRで確認はできていたけど、力負けしたかな。チャンスをつくっていないわけじゃないけどね。

 攻めきれなかった。1点を追う3回2死一、二塁。鳥谷の一、二塁間を破りそうなゴロは菊池のスライディングキャッチに封じられた。4回2死一、二塁は藤井の三塁線への高いバウンドを、大瀬良が素早く処理。5回も大和の中前への飛球を丸に好捕された。好機をものにできないうちに、5回には大瀬良に2点適時打を許した。2度しかなかったチャンスをものにした広島は残塁2。前を向くしかない負け方だった。

 和田監督

 止まることより、止まって次の日が大事だと思うので。明日やね。

 本気で愛した大瀬良くんだ。思い出の白星くらいプレゼントしよう。大事なのはこれから。関川打撃コーチも「これから何度も対戦する投手だから。次回はこれを踏まえて打てるように」とガツーンとかませる意気込みを見せた。停車してもすぐ発車するのが阪神電車の持ち味。トンネルなんかないはずのレースを、またスイスイと滑り出していこうか。【近間康隆】

 ▼阪神が今回のケースのように、ドラフト1位で競合し抽選の末に外れた新人投手と対戦(先発登板に限る)して敗れたのは、87年近藤真一(中日)以来27年ぶり。初先発で巨人相手にノーヒット・ノーランを達成した近藤に98球中、岡田の中前打1本と掛布の1四球、8三振の0封負け(0-2)だった。ちなみに、救援登板を含めると、翌88年に川島堅(広島)と対戦している。試合に勝ったものの3番手で登板した川島に1回無安打に抑えられた。