<ヤクルト2-9広島>◇24日◇神宮

 首位広島が新人の活躍で貯金を10とし、首位攻防戦となる今日25日からの巨人3連戦(マツダスタジアム)に弾みをつけた。打ってはドラフト3位の田中広輔内野手(24)が、2回にプロ1号の逆転3ランを放った。投げては、ドラフト1位大瀬良大地投手(22)が8回8安打2失点の好投。自ら2戦連続の適時打も放ち、プロ2勝目を挙げた。チームは3連勝で、2位巨人に2ゲーム差の単独首位。若鯉旋風が止まらない。

 カープにまた新星が現れた。1点を追う2回1死一、二塁。打率1割6分7厘だった田中はカウント1-2と追い込まれ、古野の内角直球に腕をたたんだ。コンパクトに振り抜くと、大飛球は右翼ポール上部付近に消えた。ビデオ判定の末にプロ1号、値千金の逆転3ランが確定した。

 「頼む!

 と。ホームランじゃないと、もう自分は終わりだと思っていました(笑い)。完璧でした」

 プロとしては小柄な身長172センチだが、口癖は「逃げ打ちはしたくない」。一塁へ走りながら流し打つ打撃を嫌う。「しっかり振りたい。中学のころからずっとホームランを打ちたい選手だったんです」。小技を求められるたび「打撃練習では自分の方が飛ばしているのにな」と悔しさをかみしめていた。ティー打撃ではボールの下部分をたたき、スピンをかけて打球を飛ばす練習もしたという。

 JR東日本に入部以降は「自分は1発を期待されていない」と冷静に分析。変幻自在に打席の立ち位置を変えるようになった。「右に引っ張りたい時は、後ろに立って差し込まれたくないので前に立ったり。基本は真ん中で、状況に応じて変えた」。もちろんプロでも役割は認識しているが、目標は「3割30本30盗塁できる選手」。コンパクトに強い打球を打つ。プロ1号には理想が詰まっていた。

 東海大相模、東海大時代は巨人菅野と同期だった。今も連絡を取り合う仲で、菅野が開幕投手に決まった際には「あいつはもともと力があった。対戦が楽しみだねと言われています」と笑顔を見せていた。菅野が広島戦に先発した10日は田中が出場せず、今日25日からの3連戦では菅野の先発予定がない。だが、仲間の背中を追いながら「やっとプロに慣れてきた」と言うまでになってきた。この日のような活躍をしていけば、ペナントをかけて戦う日が必ず来る。【佐井陽介】

 ▼ルーキー田中が逆転3ラン、ルーキー大瀬良が2勝目を挙げ広島は貯金10。新人がVアーチと勝利投手は、99年5月16日横浜戦で二岡が先制V弾、上原が完投勝利の巨人以来、15年ぶりだ。<田中広輔(たなか・こうすけ)アラカルト>

 ◆生まれ

 1989年(平元)7月3日、神奈川出身

 ◆球歴

 東海大相模、東海大を経て、JR東日本からドラフト3位で広島入団。巨人菅野とは高校、大学の同期。12年都市対抗野球では若獅子賞を獲得し日本代表

 ◆サラブレッド

 父正行さんも東海大相模野球部出身。父が1年時、巨人原監督は3年生。巨人戦の試合前には原監督から「頑張れよ」と声をかけられた

 ◆料理男子

 料理好きで中学時代は毎朝、5人兄弟全員分の弁当を作っていた。「得意料理はオムライス」

 ◆身体能力

 50メートル走6秒0、遠投100メートル。172センチ、81キロ。右投げ左打ち

 ◆契約

 契約金7000万円、年俸1100万円。背番号63