キューバの至宝に弱点?

 が見つかった。DeNAユリエスキ・グリエル内野手(30)が7日、台風8号接近に伴う飛行機の揺れに不安を訴え、巨人との沖縄シリーズを欠場することが決まった。大の飛行機嫌いというダブルパンチも重なり、球団側が配慮。遠征免除を許可した。チームはこの日、羽田空港から那覇入りしたが、グリエルは同行せず、横浜市内の病院で精神面のケアを行った。また、今日8日の試合は台風の影響により、異例の前日中止が発表された。

 前代未聞の出来事だ。グリエルが飛行機嫌いを理由に、DeNA主催の那覇シリーズを欠場する。5日の阪神戦(横浜)終了後に、沖縄行きに難色を示し、球団に遠征拒否の意向を伝えたという。球団は出発前夜まで説得を試みるも、グリエルは首を縦に振らなかった。高田GMは「飛行機嫌いはよくあるけど、どうしても乗れないという人は今までにいなかった。説得したけど、どうしても行きたくないということだった」と、本人の意思を尊重するしかなかった。

 飛行機嫌いに追い打ちをかけるかのように、台風8号が沖縄に接近中ということも影響した。高田GMは「ストレスとか、いろいろな原因があるかもしれない」とこの日、グリエルを横浜市内の病院で検査させた。診断は「飛行機恐怖症」だった。

 キューバからは乗り継ぎを含め、22時間を要して来日。ただDeNA入団後は、遠征で飛行機を使うことは1回しかなかった。グリエル合流後にチームは5回の飛行機移動があったが、グリエルが搭乗したのは羽田から金沢への移動のみ。チームとは別に、新幹線を主に利用した。カリブ海に浮かぶ母国は、ハリケーンの被害が多い。中畑監督は「俺も飛行機がダメなんだよな。3、4年前に東京に帰るときに台風直撃で死ぬかと思ったよ。グリエルもトラウマなんだろう。しょうがない」とかばった。

 不幸中の幸いなのは、今日8日の試合が中止になったこと。中畑監督は「もともと、いなかった戦力なわけだし、いないと思ってやればいいんじゃない。そういう状態で使っても、結果は残せない」と話した。一方で高田GMは、「グリエルを楽しみにしていたファンもいたし、中心選手としてやっている。我々としても痛い」と残念がった。

 今季残り試合で飛行機移動が不可避なのは、この沖縄シリーズだけ。今後はJRなどを乗り継いで、遠征に向かうことは可能だ。グリエルにペナルティーなどはなく、9、10日はベイスターズ球場(横須賀)で練習し、11日のヤクルト戦からチームに合流する予定。多くのファンが待ち望んだ巨人セペダとのキューバ対決は、誰もが予想しない形で持ち越しとなった。【細江純平】

 ◆球界の飛行機嫌い

 初芝清(ロッテ)や阪神時代の藤本敦士は長距離移動で飛行機を使用するチーム本隊と離れて、鉄道など陸路で移動することが多かった。江川卓(巨人)も飛行機嫌いで有名だったが、米国遠征で仕方なく乗った法大時代、客室乗務員をしていた正子夫人と機内で知り合った。牛島和彦監督(横浜)は北海道遠征でも寝台列車で移動。光江夫人との九州、沖縄への新婚旅行にも船を使った筋金入りだ。

 ◆過去の天候アクシデント

 台風の接近で試合中止は多数あるが、前日に中止を決めたのは異例で、04年9月の選手会ストライキ以来10年ぶり。天候等によるアクシデントでは00年9月12日、ナゴヤドームでの中日-広島23回戦が、記録的豪雨の影響でグラウンドに約1400トンの水が流れ込み、前日11日に中止が決定。岩瀬(中日)は球場内に約650万円の愛車キャデラックを駐車していたが、水没してしまった。自然現象による珍しい中止理由には、78年7月28日クラウン-ロッテ(鹿児島県立)の降灰、08年6月14日楽天-巨人(Kスタ宮城)の地震などがある。