<阪神2-3巨人>◇23日◇甲子園

 同点で迎えた9回2死満塁。阪神能見篤史投手(35)が投じた117球目だった。内角低めへのフォークが、ホームベース手前で跳ねた。本塁ベースカバーに能見が走った。その横を三塁走者・鈴木がガッツポーズをして通り過ぎていった。

 「ワンバンばかり投げてしまって申し訳ない。試合の流れもあるから」と、女房役をいたわった。この日、何度も梅野が体を張ってワンバウンドを止めた。最後の最後ではじかれた1球。エース左腕が力なく汗をぬぐった。3回に同点に追いつかれてから、粘った。スコアボードに「0」を並べていったが、9回に「1」を点灯させてしまった。

 6回7安打2失点で黒星を喫した前回12日の巨人戦(東京ドーム)から攻め方を変えた。フォークをことごとく見極められていた。この日、3回までに投じたフォークはわずか1球。3回、先頭のロペスに本塁打を許した、その1球だけだった。中西投手コーチは「パターン、組み立てを2まわり目から変えた。スライダー、チェンジアップ中心だったけどマークが変わってきていた。よく投げた」と説明。4回以降はフォークを織り交ぜた。ワンバウンドになっても、腕を力強く振った。

 巻き返しを誓った後半戦開幕カードだった。「僕自身、巻き返しなんでね。(相手は)どうこういうことじゃない」。開幕投手を務めた14年シーズン。前半戦は苦しんだ。15試合に登板し5勝8敗。5試合連続2桁奪三振の日本記録をつくりながら、勝ち運に見放された。6試合勝ちなし、4連敗で折り返した屈辱を晴らすことがエースの務めだった。

 0・5差接近に失敗し、首位巨人とは2・5差。本当の勝負はまだこれからだ。夏場の巨人猛追へ、エース復活は虎のビタミン剤になる。【宮崎えり子】