<広島6-0阪神>◇22日◇マツダスタジアム

 マエケンが全身を真っ赤に染めて熱投した。広島前田健太投手(26)が5安打で阪神を完封。5年連続の2ケタ勝利を12奪三振の力投で飾った。チームはこの試合から本拠地6試合限定で、「赤道直火」と名付けた赤いユニホームを着用。20日未明に起きた広島市の土砂災害の犠牲者を悼み、喪章を袖につけ、災害後初のホーム試合で白星を挙げた。

 真っ赤な戦闘服がよく似合う。前田は闘志むき出しで139球を投げ抜いた。12奪三振5安打で今季初完封。「今回は完封しないと意味がないと思っていた。前回ふがいない、最低の姿を見せてしまった。せっかく巨人、阪神と当たっているのになかなか勝てなくて、すごく悔しかった」。期するモノがあった。

 前回15日巨人戦は強い雨の中、マウンド上で自分自身へのいら立ちを隠せず3回6安打6失点。後半戦は4戦連続で阪神、巨人とのカード頭を任されながら、1度もチームを勝利に導けていなかった。この日はノーワインドアップではなく、「状態も悪かったし、気分転換で」と、昨年6月以来のワインドアップを選択。スライダー、ツーシーム、150キロを連発した直球。全てが本来の出来に戻った。

 この日からマツダスタジアム6試合限定で、全身を「モロッコの赤」に染める「赤道直火ユニホーム」を着用。左袖には喪章が縫い付けられていた。20日未明に広島市で起きた土砂災害で多くの犠牲者、行方不明者が出ている。自身のブログをチェックすると、被災者から何通ものメッセージが届いていたと言う。

 「今、唯一の楽しみはカープが勝つことです」-。

 土砂災害後、初めての本拠地ゲーム。鳴り物応援は自粛されたが、その分、大歓声に耳を澄ました。「応援はすごく耳に入っていました。勝てば喜んでもらえる、明るい材料になると思った」。パドレスなど数球団のメジャー関係者が熱視線を送る中、7月12日中日戦以来、5試合ぶりの白星。5年連続2ケタ勝利という個人記録は二の次だった。

 防御率2・48でリーグトップに返り咲いただけで、満足するわけもない。「乗っていかないといけない。順位を上げるために、勝っていかないと」。23年ぶりのV奪回。それこそが広島で暮らす人々を幸せにできると信じて、残り試合を突っ走る。【佐井陽介】

 ▼前田が今季初完封で10勝目を挙げ、10年から5年連続2ケタ勝利。10勝を5年以上続けたのは09~13年田中(楽天)以来で、広島では86~91年川口以来9人目。広島は今季6度目の完封勝ちだが、過去5度は継投で、完封投手は108試合目で初。今季、両リーグで完封投手がいないのは広島だけで、チーム108試合目で初の完封投手は球団史上最も遅い記録となった。この日の前田は139球。10年9月30日ヤクルト戦の136球を上回り、完封勝ちでは自身最多投球数だった。