<広島6-0阪神>◇22日◇マツダスタジアム

 もうじれったい…。首位浮上で乾杯どころかマエケンに完敗だ。首位浮上の可能性もあった広島戦は5安打12三振で今季8度目の完封負け。4番マウロ・ゴメス内野手(29)が4三振、バットをたたき折るイライラが虎を惨状を象徴していた。宿敵巨人は延長サヨナラ勝ち。再び1・5ゲーム差に突き放された。あぁ、これじゃ夏休み中に奪首の宿題が終わらない!

 壁が高い。虎の、実に6度目となる奪首挑戦も無残に散った。5点を追う8回、1死から連打で前田に食い下がった。2死一、三塁。大勢は決していても、完封阻止への「執念」を見せる好機だった。頼みはゴメス。エース対4番で、またも外角ボールになるスライダーにバットが空を切った。今季8度目のゼロ封負け。指揮官からも、虎党に負けないため息が出そうだった。

 「マエケンも初回から飛ばしてきたけど、最後まで落ちなかったね。ここ2回は何とか得点できたけど、今日のマエケンが本来のマエケンというか…。こういう時に打ってこそ価値があるんだけどなあ」

 脱帽だった。今季3試合目の対戦、それまでのノーワインドアップからワインドアップへ変えてきた。左右高低、ストライクゾーンの四隅を突く投球術も、球のキレも健在。5回まで「H」ランプは鳥谷の内野安打1本だけ。昨季に6戦1勝4敗、防御率0・40と封じ込まれた天敵の姿を、よみがえらせてしまった。

 悪循環だった。ゴメスは来日2度目の自己ワースト4三振。無死一塁で空振り三振した4回は、そのままバットを地面にたたきつけて折る醜態をさらした。試合後は珍しく無言のまま、足早にバスへ。続くマートンはボール気味の低めをストライクとコールされると、良川球審に歩み寄った。ベンチから和田監督らが素早いダッシュで間に入り事なきを得たが、いらだちは随所に見えた。首位浮上のチャンスが目の前にありながら、つかめそうでつかめない。思うようにならないストレスなのか…。和田監督が厳しい表情で言う。

 「今日は全体的にそういうもの(イライラ)があったけど、いかに早く戻すか。平常心で野球ができていなかった気がする。エースに完封されるとね。こういうこともあるけど、今日限りにしたいね」

 連勝は4で止まり、続けてきたカード初戦の白星も6でストップした。土俵際で底力を見せる首位巨人とは1・5ゲーム差。3位広島にも1・5差に迫られた。和田監督は、あまりの完敗に「今日は引きずることないと思う」。ペナントは残り34試合、最終コーナーを回った。16年前、大エースだった村山実氏が亡くなった8月22日。命日に見せられなかった「執念」を、見せる時が来ている。【近間康隆】