<広島4-0巨人>◇15日◇マツダスタジアム

 もう、勝ち続けるしかないっ!

 広島前田健太投手(26)が今季6試合目にして、巨人戦初勝利を飾った。6回無死まで無安打投球を続け、8回を2安打無失点。自身4戦ぶりの白星となる11勝目を挙げた。逆転Vへ落とせない直接対決の第1ラウンドを勝利に導き、首位巨人をマジック12のまま足踏みさせ、ゲーム差を4に縮めた。

 6回表が終わった直後。広島前田がベンチに腰掛けると、ロサリオが近づいてきた。無安打投球を続けていた6回、先頭片岡の左中間への飛球を左翼ロサリオがキャッチできず、二塁打と記録された。中堅丸に譲ろうとしたのか、中途半端な守備になった。バツが悪そうなドミニカンの謝罪に、満面の笑みで返した。

 「(先制)ホームランを打ってくれたし、大丈夫、これでチャラだよ、と話しました」

 ノーヒットノーランより勝利を欲した。巨人戦はここまで今季5戦先発で0勝3敗、防御率3・82。ここ2試合はKO負け。逆転Vへ崖っぷちに立たされての直接対決3連戦初戦。女房役の石原と「もうちょっとストレートでいった方がいいんじゃないか」と話し合い、最速151キロの直球を主体に力強く押した。8回2安打1四球で無失点。今季巨人戦初星は文句なしの内容だった。

 3日前の9月12日、長女が1歳の誕生日を迎えた。広島から敵地阪神戦に移動する日の朝、家族でささやかなお祝いをした。

 「僕らはその年の成績次第。子供には苦労をかけたくないんです。僕の成績で生活も変わるし、将来も少しは変わってくると思う。子供が20歳になるぐらいまでは親が頑張らないと。そこはやっぱり変わりました」

 父として、絶対的エースとして、想像を絶する重圧と闘う覚悟はとうの昔にできている。今季、自身に課せられた重大任務は、カープを23年ぶりのV奪回に導くこと。妥協するつもりはない。残り15試合、首位巨人とのゲーム差は4に縮まった。「いけるとか厳しいとかは問題じゃない。とにかく全部勝たないといけない。不可能な数字ではない」。自らの手で、奇跡を起こす。【佐井陽介】

 ▼前田が巨人から今季初白星となる11勝目。マツダスタジアムでは今季9勝目(2敗)となり、本拠地球場で9勝した広島投手は89年津田以来だ。前田は3日巨人戦の6回から17イニング連続無失点で防御率は1位菅野(巨人)へ0・06差に接近。前田は10、12、13年と防御率のタイトルを獲得しており、残り試合で56~58年稲尾(西鉄)に次いで史上2人目の3年連続防御率1位に挑戦する。