<ヤクルト3-5阪神>◇15日◇神宮

 プロ入り後、初めての神宮で阪神岩崎優投手(23)が笑った。

 岩崎

 我慢したピッチングができたのでよかった。

 7回を1失点でしのいで5勝目だ。苦しかったが、崩れなかった。あこがれの舞台で逃げなかった。踏ん張り続けたサウスポーに、勝利の女神がほほ笑んだ。

 いきなり先制点を許した。1回2死三塁で、4番バレンティンに高めに浮いたシンカーを左前に運ばれた。再び2回に2死満塁のピンチ。川端との勝負。2ボール。このとき、三塁新井貴がマウンドに駆け寄ってきた。「ストライクゾーンの中で自信のあるボールで勝負しろ」(新井貴)。耳打ちされた言葉に目が覚めた。直後の3球目は勝負球の真っすぐで中飛に打ち取った。3回に雄平、畠山を連続で見逃し三振に斬るなど、2回のピンチを乗り切って以降は際どいコースにズバズバと投げ込み、ヤクルト打線を封じてみせた。

 岩崎

 自分は低め低めに投げることが長所だと思っているので、どんどん出していこうと思いました。

 国士舘大時代は東都大学リーグの入れ替え戦でしか、神宮のマウンドには立てなかった。3年秋の2部3部入れ替え戦での2イニングだけ。「神宮第2の思い出が多いですね」と話すのも無理はない。隣の第2球場で力をつけていた。

 プロへの道が切り開かれたのは、大学3年の秋。中尾孝義スカウトが東都大学2部リーグに、他の4年生の選手を見に行った時だった。「いいボールを投げるなという印象だったんだよ。でも一番は顔にほれたね。プレッシャーがかかるときでも平気で投げられる子なんだよ」(中尾スカウト)。どんな窮地でもポーカーフェースの岩崎にほれ込んだ。この日、苦境でも表情を変えなかったように。

 ドラ1左腕岩貞がこの日、出場選手登録を抹消された。入れ替わって登録され、プロ最長タイの7回力投。中5日での21日中日戦(甲子園)の先発が確実になった。大学時代は近いようで遠かった神宮。新たな思い出が、岩崎のさらなるパワーの源となるはずだ。【宮崎えり子】