日本ハム金子誠内野手(38)がユーモアたっぷりの持ち前のネガティブトーク全開で、現役引退を表明した。27日に札幌ドームで会見を行い、21年目の今季限りでユニホームを脱ぐ決意を明かした。脇役に徹した自らの存在価値を「うな丼の『さんしょう』。あったらいいけど、なければ、ないでいい」と難解の例えを駆使し、涙を見せずに痛快に締めた。10月1日楽天戦(札幌ドーム)の引退セレモニーでピリオドを打つ。

 ウイットにあふれた、サヨナラだった。湿度0パーセント、数々の別れの言葉。金子誠がサバサバと笑って、しんみりした引退会見を締めた。使い込んだバスタオルを持参した。1度も手をやることなく覚悟を伝え切った。会場からの去り際にポツリと漏らした。「本当は泣くかと思って、バスタオルを持ってきたんだけどね」。未使用のまま終えた白地の号泣対策グッズを手に、舞台裏へ消えた。

 第一線に立ち続けた「金子誠」という選手を軽妙に、表現した。

 金子誠

 うな丼の「さんしょう」。あったらいいけど、なければないでいい。

 東京ドーム時代に田中幸雄、片岡篤史ら…。04年に札幌ドームへ本拠を移してからは新庄剛志、小笠原道大。野球人生の晩年は稲葉、中田ら主役を生かすことに徹した。「成績、数字で誇れるものはない」。名バイプレーヤーに生き甲斐を感じ、愚直に極めた。

 決断を明かす背景にも、信念があった。引退の意向を固めたのは5月1日。家族にさえ、ここ最近まで明確に伝えなかった。チームメートには26日ロッテ戦前に報告した。「引退する選手と一緒にプレーするのは、やりづらい」。過去の自身の体験から黙秘し、淡々と2軍で若手らとプレーしてきた。引退の表明も、セレモニーも1度は固辞。先に表明した稲葉の影に隠れ、ひっそり辞めるのが理想だった。島田球団代表の説得に折れたが、最後の最後まで日陰を好んだ。

 美学に従った。この日の試合前時点で、公式戦残り全試合出場なら、ちょうど2000試合出場に到達可能だった。球団側と相談した上で、10月1日の「引退試合」をラストに決めた。その後は戦列を離れることになった。進出の可能性があるクライマックスシリーズにも、出場しないことを決めている。「プロ野球選手が大好きなので、プロ野球選手でなくなるのは寂しい」。まっとうした天職に敬意を払う。生き様を最後まで貫く。散り際にまで、不屈の21年間を紡いだ強さの結晶がある。【高山通史】