目の前に日本一への道がくっきりと見えた。阪神藤浪晋太郎投手(20)は19日、「チャンスはつかめたので」とあらためて巨人撃破の価値をかみしめた。CSファイナルステージでは第1戦に先発。7回1失点の好投で4連勝の足がかりとなった。日本シリーズも4戦先勝制。負けられない戦いの連続は、甲子園春夏制覇した大阪桐蔭時代と重なった。

 「トーナメントの気持ち?

 当然です。1試合も落とさないぐらいの気持ちでやりたい」

 日本一、を知る男の言葉は重い。目標に「勝てる投手」を掲げ、高校時代から大舞台で堂々の投球を見せてきた。昨年はCSファーストステージの開幕投手を務めながら、敗戦投手の悔しさを味わった。今年はやり返した。東京ドーム決戦の初戦を任され「意気に感じる部分がありました」と言った。プロ2年目の20歳は、プレッシャーをものともしない。「シーズン最後なので多少無理しても、与えられたところで投げたい」。身を削ってでもつかみたい称号があるから、自然と言葉に熱が帯びる。

 「2位以下なら一緒。やっぱり優勝したいんです」

 藤浪は優勝したいのだ。それには日本一しかない。シーズンでは首位巨人に7ゲーム差をつけられた。CSを突破しても、それは日本シリーズの出場権を獲得したに過ぎない。優勝とは違う。高校での日本一を再び味わうために、リミッターは解除する。目の前の相手をねじ伏せた先に、頂は見える。【松本航】