<SMBC日本シリーズ2014:ソフトバンク5-2阪神>◇第4戦◇29日◇ヤフオクドーム

 阪神が追い込まれた。延長10回、守護神呉昇桓投手(32)が中村にまさかのサヨナラ被弾。1回に2点を先制されるも3回に追いついたが、終わってみれば4安打と貧打が響いた。チームは3連敗となり、日本シリーズの敵地での連敗は8に伸びた。29年ぶりの日本一へ、崖っぷちまで追い詰められた。

 呉昇桓がこだわり続けた「石直球」が、一瞬にして右翼スタンド中段で弾んだ。148キロ内角高め。シーズン中盤以降、空振りを奪ってきたボールだった。真っ赤に揺れるスタンドに一瞬目をやると、うつむきながらベンチへ歩き始めた。悲劇のヒーローは、たきつけるフラッシュをくぐり、早歩きで引き揚げた。

 呉昇桓

 ちょっと中途半端になってしまった。何か違った?

 いつもと変わらなかったけど、本塁打を打たれたからそう見えたんじゃない。今日は質問短めで。ダイジョウブデスカ。

 延長10回1死一、二塁で送り込まれた。まずは直球3球で、松田を二飛に仕留める。2死一、二塁で打席に中村。1ボールの後、3球ファウルで追い込んだ。ここもすべて直球。そして5球目。サインが決まった後、1度プレートを外していた。サインの変更はなかったが、間が空き、仕切り直した後の被弾だった。

 走者が二塁に進めば呉昇桓の投入は決まっていた。それほどの信頼を勝ち取ってきた。中西投手コーチは「1点を取られたら終わりなわけだから。(直球は)自分が一番いいボールを選択して打たれたんだから仕方がない」とかばった。当然のように打たれた守護神を責める者はいなかった。

 和田監督は試合後、珍しくイスに座ったまま腕組みし、しばらく立ち上がらなかった。隠せないショック。時間を置いて現れた会見場では相づちが続き、「何としても甲子園に戻って勝負できるように、明日やるしかない」と最後は前を向いた。

 ▼阪神のサヨナラ負けは、03年第1戦でズレータ(ダイエー)に中前打を許して以来11年ぶり4敗目。サヨナラ本塁打を浴びたのは、62年第5戦で小山が岩下(東映)に、64年第4戦で村山がハドリ(南海)に打たれて以来通算3本目。3本中2本がこのカードで、被本塁打3は西武の4に次いで2番目に多い。

 ▼阪神は敵地で03年から通算8連敗。日本シリーズの敵地連敗記録は西武が94~02年に喫した10。

 ▼阪神は4試合で本塁打が0。第1戦から4試合連続で無本塁打は51、65年南海、71年阪急、99年中日、05年阪神以来6度目のワーストタイ。4連敗した05年阪神以外は第5戦で本塁打が出ていたが、今日の阪神はどうか。なお05年から通算8試合連続本塁打0はシリーズワースト記録。