<SMBC日本シリーズ2014:ソフトバンク1-0阪神>◇第5戦◇30日◇ヤフオクドーム

 まるで予期しない幕切れで、甲子園に戻るどころか、29年ぶり日本一の夢までついえた。王手をかけられた第5戦は、5安打0封負け。1点を追う9回に3四球で満塁としながら、打者西岡の走塁が守備妨害と見なされてゲームセット。9年ぶりの日本シリーズで敵地連敗もノーアーチも止められないままジ・エンド。大きな宿題を残し、2014年が終わった。

 同点-。そう思った直後、西岡の守備妨害で試合終了になった。一瞬の間からソフトバンク秋山監督の歓喜の笑顔が広がる。ベンチを出た和田豊監督(52)は猛抗議を続けた。タカ党の冷たい視線が突き刺さった。虎党は無数のメガホンを投げ入れた。苦しみ抜いた2014年、最後は前代未聞の幕引きだった。

 「審判の判定だからね。邪魔しに行ってるわけではないけど」

 1時間近い表彰式、セレモニーを終えると指揮官は冷静さを取り戻した。9年ぶりの大舞台。勢いよく先勝したものの、第2戦から4連敗。29年ぶりの日本の頂点は遠かった。開場90周年の本拠地で初の日本一胴上げは、夢に終わった。

 「もう1回甲子園に帰りたかったけどね…ソフトバンク、強かった」

 崖っぷちで動いた。「1番左翼マートン」。9月10、11日の巨人戦で試した切り込み隊長を大一番で実行した。前夜は代打起用せずに好機をつぶし、15回制を意識して呉昇桓の投入が遅れた。1回1死一塁は鳥谷、3回は1死一塁で上本にランエンドヒットを仕掛けた。ポストシーズンでの「攻めの采配」を取り戻したが、打線はこの日も眠ったままだった。

 「ジッとして同じやられ方するわけにはいかないので。なるべく動いて何とか打開しようと思ったけどね」

 タテジマ一筋30年目、虎将の苦悩は想定外だった。「27年の免疫があるから大丈夫かと思ったけど、それをはるかに越えていた」。9月に6連敗してリーグ優勝が消えた。「現役から甲子園が大好きで世界一の球場と思っているけど、今は怖い時がある」とこぼしたこともある。大詰めで粘って逆転2位。CSでは「大胆かつ繊細じゃなく、繊細かつ大胆に」と考えを変えた。最後に力尽きたが、手応えもつかんだ秋だった。

 「やっと大一番で力を出せたというか躍動できた。1つの殻は破った気はする。今回のシリーズの負けを糧にしてね。この終わった時点で来季の戦いは始まるわけやから。もっともっと練習しないといけないと痛感した」

 日本シリーズは03年から敵地で9連敗の「内弁慶」のまま終わった。本塁打も1本もなし。リーグ優勝に加えて、日本一という大きな宿題が残った。1年後の歓喜のために、また走り出す日が始まる。【近間康隆】

 ▼阪神は敵地で03年から通算9連敗。特にヤフオクドームでは7戦全敗。日本シリーズ敵地連敗記録は西武が94~02年に喫した10。

 ▼阪神は5試合で本塁打が0。同一シリーズで本塁打0は05年阪神(4試合)に次いで史上2度目。05年から通算9試合連続本塁打0はシリーズワースト記録を更新。

 ▼阪神は3回にマートン、上本が盗塁死。1イニング2盗塁死は初めて。シリーズ盗塁0は8度目のタイ記録。チーム本塁打、盗塁ともに0は初めて。