広島緒方孝市監督(45)が20日、日南秋季キャンプで2時間ノックを打ち続けた。投手陣を内野に置き、右へ左へ動かした。狙いはズバリ、ブルペンや投球だけでは見えない部分を見ること。「新しい発見があった」と手応えを口にした。また2年目の美間優槻内野手(20)を来春の1軍キャンプに同行させることを決めた。今日21日にキャンプ最終日を迎えるが、最後の最後までレベルアップを目指す。

 真っ赤なノックバットが約2時間、打球音を奏で続けた。さらに大声を加え、緒方監督は選手と向き合う。午後1時30分。投手陣が汗を流す東光寺球場に立った。自らバットを握り、右へ左へノックの雨を浴びせる。手にはテーピングを巻き、ウインドブレーカーは汗で色が変わった。

 「諦めるな!」

 「いいぞ野球小僧!」

 「守備範囲広いね!」

 最初は遠慮がちだった選手も、終盤は「もう一丁」で応戦。午後3時半の戦い終了まで、九里亜蓮投手(23)ら若手投手を鍛え上げた。下半身強化と、バットとボールを使ったコミュニケーション。さらにそれ以外にも指揮官の狙いはあった。

 「ああやって接してみて初めて分かる、性格の部分もある。ブルペンや投球では見えないところが見えた。新たな発見もあった。厳しいうちに入らんよ」

 ギリギリのところで見える根底の性格。ボールを追うことを諦めてしまうか、最後まで追えるか。バットを握って観察していた。最終日前日にして行ったのには、そんな理由もあった。

 緒方流は人選にも現れた。2年目の内野手、美間を来春の1軍キャンプに連れて行くことを決めた。「引き続き見てみたいね」と実戦でも結果を残した美間を同行させることを決めた。「少なくともそういう舞台にいく準備をしないと、あっという間に時間が過ぎてしまうのがプロの世界。次から次へと入ってくる。チャンスを逃したらなかなかもらえないからね」と、オフのレベルアップの注文も忘れなかった。

 最後の追い込みでも、動ける監督の本領が発揮された。自らもキャンプ中、走り込んで体力づくりに励んできた。キャンプは今日21日で打ち上げだが、最終日も当然、さらなるレベルアップを目指す。【池本泰尚】